第17話

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第17話

Sweet Day ー 1 予定より少し早くなったが、彼と野崎さんが帰ると、関谷と俺も急いで書類を片付けた。 一旦、自宅のマンションに寄り、一泊分の必要な荷物だけを、大きめのバッグに詰め込んだ。 それを持って関谷の待つ車に戻った俺に、関谷が「荷物はそれだけ?」と聞いてきた。 「一泊するだけなのに、そんなに要らないだろう」と答えると、関谷は「ん〜まぁ、いいか」と、訳の解らないことを言った。 その後、彼のマンションへ向かう途中の大型スーパーで、買い物をする事になった。 「簡単に出来る料理・・・野菜も欲しいな・・・」と考えながら、商品を見ていたら「明日の分も必要じゃないか?」と関谷が言い出した。 「あぁ、朝と昼の分か・・・あっ、調味料とか揃ってんのかな?」 「俺が知るか。RINEしてみればいいじゃん」 「そうするか」と言って、ポケットからスマホを出してRINEすると、予想通り何もないと返信が来た。 「ん〜最低限の調味料は買っておくか・・・」 俺がそう言いながら、調味料が並んでる棚を眺めてると、関谷が「どうせそのうち増えてくだろ」と、意味深に言った。 「さっきから何が言いたいんだ?」 「だって付き合ってんだから、自然とそうなるだろ」 (ん〜そういうものか?)と、過去を振り返ってみたものの、泊まる事はあっても、料理をしたり等の事はした事がないからピンとこない。 「そもそも、付き合うって何だろうな?」 「はぁ?」 「いや、解ってるんだけど・・・」そう俺が言葉を詰まらせると、関谷は「だから考え過ぎなんだって。理屈じゃないだろう」と言う。 「解ってるって。でもやっぱり、考えるだろう?」 「普通は考えないんじゃないか?そりゃあ、お前らの場合、考えざるを得ない事も多いとは思うけどさ。でもそれは今、考えなくてもいいんじゃないかと思うけどな」 「職業病かな?」 「お前だけだよ。俺はそこまで考えないし、兄貴だって考えてないと思う。ましてやプライベートな事だしな」 確かに何事にも、理由や動機を見出して答えを出そうとするのは、仕事をする上では有効なのかも知れない。でもそれを、プライベートで発揮するのは止めた方がいいのかも知れない。 (彼との事は、俺がそうしたいって思ったからだし、そういう枠に当て嵌めて考える事でもないよな。これからの事だって二人の事なんだから、その都度、二人で考えればいいんだよな) 「付き合いたてなんだからさ、もう少し色気のある方向に考えろよ」 「はぁ?それじゃあ今までと大差なくなるだろ」 「あ〜悪い。今のは俺の言い方が悪かったな。もう少しリラックスして、楽しめばいいんじゃないか?そもそも、付き合いたてって楽しいもんだろ?」 関谷に聞かれて、何も言い返せなくなった。何故なら、今までの彼氏達とも、そういった深い付き合いをしていなかったから。恋人同士とはいえ、やってる事は至って即物的だった。だから余計に混乱する。 「でも、そうだな・・・お前の言う通りかも知れない。今までとは違うんだから、お互いの事を知りつつ、楽しめるように努力しよう」 俺が決意表明が如く言うと、関谷が溜息混じりに呆れたように言う。 「だからお前のそういうとこだよ。もっと楽に出来ない?」 「だって、こういうの初めてだから・・・」 「散々遊んだクセにこれだよ。セックスを前提にするからそうなるんだよ」 「余計なお世話だ」 俺がイラッとしながら言うと、今度は諭すように関谷は言った。 「でもこれからはさ、失敗や喧嘩をしながらでも、その度に二人で話し合って仲直りして、お互いの気持ちをちゃんと育めよ」 「お前から、恋愛について語られるとはな」 「俺だって恋愛した事ない訳じゃないからな?」 「知ってる。だけど、すぐ振られるのはどうしてなんだうな?」 「それは俺が知りたい」と、肩を落とす関谷に「お前にもいい人が見付かるといいな」と声を掛けた。 「急に灯里が大人になった気分だな」 「だからそうやってすぐ、子供っていうか弟扱いすんの止めろ」 買い物をしながら、訳もなく騒いでいた。俺は(緊張してるけど・・・これはやっぱり浮かれてんのか?)と思った。 会計を済ませて袋に詰めていると、関谷が「結構な荷物になったな」と言った。 「食材が余ったら、何か作り置きでもしておくからいいよ」 「料理上手な嫁を見付けられて、本條さんも幸せだ。そうだ、買い出しの費用は経費で落とすから、レシートを取っておいて欲しいって、野崎さんが言ってた」 「誰が嫁だ」と文句を言いつつ「経費で落とせんのかこれ・・・」と付け加えて、分担して荷物を持って車へと向かった。 「本條さんの健康管理に関する物は、全て経費で落とすって言ってたぞ」 「それなら、他にも色々買っておけば良かった」 後部座席へと荷物を運び入れながら、後悔するような事を、呟くと「だから、そのうち増えるって」と、関谷は言う。 「さっきも思ったけど、まるで俺達が同棲するみたいな言い方だな」 「しないのか?そしたら健康管理も、本條さんの変化にも気付ける。お前の変化にも気付いて貰える。何より会える時間も増えるぞ」 「なんのプレゼンだよ。それに同棲するにしても、そう簡単には出来ないだろう」 「通い婚よりはセーフな気がするけどな〜って着いたぞ。え〜と駐車場も暗証番号なんだよな・・・」 (ここって俗にいうタワマンだよな?さすが売れっ子は住む所も違うな・・・) 「駐車場から直接、本條さんの部屋の階まで行けるんだって。コンシェルジュにも警備にも話は通しておくとは言ってたけど、今日のところは此処から行くか」 「お前やたら詳しいな」 「野崎さんから聴いてるからな」 「まさか、仕組んだのか?」 「いやいや、本條さんの仕事がキャンセルになったのは、本当に偶然。それでたまたま灯里の話をしたらこうなった」 「ホントか?他に何か企んでんじゃないだろうな」 「ないない、それより着くぞ」 高級タワーマンションに住む、売れっ子俳優の部屋に行く未来を誰が予想し得たか。 しかも偶然とはいえ、上手く流された感じがして、気に入らなかった。だけど、これがいま出来る最善策なら仕方ないとも思った。 (色々と訳が解らない状況になってきたけど、そう、仕方ないんだよ。野崎さんの言う通り、本條さんと付き合うってこういう事なんだよな・・・) とてつもない展開と疾走感で進む舞台。もしくは、恋愛ドラマにでも出演しているかのような・・・そんな一日だな〜と思った。 まさか大好きな人が、自分の部屋に泊まりに来る事になるなんて・・・(まだ仕事から抜け切れていないのかな)と思う程、あまり実感が湧かないのが正直な気持ちだった。 (だって、ちょっと前までは俺の、完全な片想いだと思ってたし。それが、まさかの両想いで付き合う事になった・・・その事が既に夢みたいなのに!なのに!今こうして一緒にご飯を食べてる・・・しかも先生の手料理!) 「本條さん、お口にあいませんか?」 「へっ?あ、違います、違います!先生の料理、めちゃくちゃ美味しいです!」 「大袈裟です。でも・・・そう言って貰えると、作った甲斐があります」 「先生の料理を食べてみたいと思っていたから、何だか夢を見てるみたいです」 俺が思った事を正直に言うと、先生は笑いながら「前にも似たような会話しましたね」と言った。 「あぁ〜しましたね。大丈夫です、俺は目を開けたまま寝ません!」 「普通は寝れませんよ」と、先生は可笑しそうに言った。 「先生。改めて思った事を言ってもいいですか?」 「どうぞ。何かあるなら話して下さい」 「俺は今まで、何事に対しても前向きでいようとか、悪い事は考えないようにしようと思ってきました。でも先生の事になると、それが上手く出来ないです」 「それは俺も同じですよ。前にも言いましたけど、本條さんの事になると、自分が自分ではないような感じがします」 (そういえばあの時、先生は「自分らしくない」って言ってたな) 「会えなかった一週間は、早く会いたいって気持ちでいっぱいだったのに、なんか変なんです。実際こうして目の当たりにしてるのに、これは夢なんじゃないかとか、ドッキリなんじゃないかとか、そういう事ばっかり考えちゃって・・・」 「それ、俺も考えましたよ。都合のいい夢を見てるみたいだなって。今感じてる幸せを、そのまま素直に受け止めればいいんでしょうけどね。俺の場合、今までが今までだった所為か、どうしても・・・」 俺は何もかもが初めてだから、実感が伴わないんだろう。でも先生は、俺のそれとは違う。 もしかしたら実感云々の話じゃなく、心の底の何かがまだ引っ掛かっていて、素直になるというより・・・「怖いですか?」つい、声に出してしまってから(やばい、またやった)と思った。 「相手が俺なら、思っている事は言葉にしていいんですよ。でも仕事中は気を付けた方がいいですね」 「仕事中は大丈夫です。あ〜でも、先生の事になると顔に出てるって、野崎さんにも言われました」 「それは本当に気を付けないとダメですね」と、軽く叱るように先生は言った。 「気を付けます。それと同じように、先生に対しても気を付けます。先生を傷付けたくないし・・・」 「それは違いますよ。思っている事や、気付いた事は何でもいいから話して欲しいです。変な気遣いをされる方が、その・・・他人行儀というか、距離を置かれてるみたいで嫌です」 「そういうつもりじゃないんですけど・・・」と言ったものの、次の言葉が見付からず、つい無言になってしまった。 「とりあえず、料理が冷めちゃうので先に食べちゃいませんか?」 「そうですね。せっかく、先生が作ってくれたんだから、温かいうちに食べましょう」 俺は今日の撮影の事や、差し入れのお菓子を選んでる時の事を話した。先生はいつも通り、相槌を打ちながらも、時々可笑しそうに笑っていた。 食事が終わると二人で片付けをして、先生が洗い物を始めた。俺が何か手伝う事はないかと聞くと、先生は「お風呂に入りたいんですけど・・・」と、遠慮がちに言った。 「じゃあ、お湯溜めて来ますね」 「すいません、お願いします」 俺は浴室に向かいながらふと(ん?先生がお風呂に入るって事は、湯上り姿が見られる?)と、とてつもなく下世話な想像をしてしまった。 (だって、そりゃあ泊まるって言ったら、期待するじゃん!でもそれじゃあ、先生の歴代の彼氏やセフレ達と同じ、身体目的みたいで嫌だな・・・) 「本條さん」と呼ばれて、ビクッとしながら振り返ると先生が、バスルームの入り口に立っていた。 「ど、どうかしました?」 「なかなか戻って来ないので、気になって見に来ました。どこか具合でも悪いですか?」 「あ〜違います、大丈夫です。あ、そうだ。タオル類とかは此処に入ってるので、勝手に使って下さい。洗濯物はこの・・・」 「はぁ〜・・・意識し過ぎでしょ。それより、薬の時間です」そう言って先生は「ほら、行きますよ」と言って、俺の手を引いてリビングへと向かった。 先生に握られたその手が熱い。服の隙間から見えている襟足の辺りが、ほんのり赤くなっている。 (もしかして先生も、意識してくれてる?)と、自分の都合のいいように捉えてしまった。 「先生、今日も薬飲まないとダメですか?」 「いくら軽い薬とはいえ、急に服用を止めるのは良くないですよ」 「でも、せっかく先生と居られるのに・・・」 自分でも我儘を言ってる自覚はあった。でも貴重な時間を逃したくもなかった。別に、そういう事がしたいとかじゃなく、単に他愛もない話をしたりするだけでも良かった。 すると先生は、何かを考え込みながら「ん〜仕方ない。休みの前の日だけ、これとこれだけでいいです」と、渋々といった感じで言った。 「休みの前の日だけですよ。普段はちゃんと飲んで下さいね」 「やった〜!」 「約束ですよ?」と怖い顔をして言われ、圧されるように「は、はい。約束します!」と返事をした。 「そういえば本條さん、来てからずっと思ってたんですけど、普段・・・家に居る時もそういう、キッチリした服装なんですか?」 「そうですけど」 「家に居る時くらい、もっと楽にすればいいのにと思って・・・入院してる時みたいなラフな服装」 「いや、あれは落ち着かなかったです」 俺が心の底からそう言うと、先生は「普通は逆だと思うんですけどね」と、首を傾げながら言った。 「寝る時はパジャマです」 「あ〜なんか、そんな感じですね」そう、先生が可笑しそうに言うと同時に、給湯器が鳴った。 「あ、お湯が溜まったみたいです。先生どうぞ」 「本條さんは入ったんですか?」 「俺は帰宅してすぐに入りました。習慣なんです」 「なるほど。じゃあ、お風呂借りますね。先に着替えて、デザートでも食べて待っていてください」 「なんで、デザートがあるって知ってるんですか?」 「冷蔵庫に、あのお店の袋が入ってました」 「差し入れとは別に、ケーキ買ったんです。先生も一緒に食べましょう」 「解りました、では少し待ってて下さい」と言って先生は、バスルームへと行った。 (意識し過ぎって、人の事言えないだろ)そう、バスタブに浸かりながら思った。 なんせ荷物の中には一応、それなりの物を一通り忍ばせて来てあるから。 (だって、好きな人と一緒に居るんだし。ぶっちゃけると、本條さんに抱かれたい。でもそれじゃあ、今までの奴等と何も変わらないよな。本條さんとは、ちゃんと付き合いたいし向き合いたいし・・・自重するか) 俺はバスタブから出て、シャワーを出しながら(でも、もしかしたら・・・。だからそう、これは念の為。万が一に備えて悪い事はない)と、自分に言い訳をしつつ後ろの準備をした。 風呂から出てリビングに行くと、彼はソファに座って、真剣な顔でテレビを見ていた。 「あ、これって前に、本條さんが出てたドラマですよね?」 「え、あ、お風呂から出たんですね。というか、先生知ってるんですか?」 「当直の時にスタッフルームで、看護師が見てたんですよ」 「先生がテレビ見てるところが、想像しにくいです。ていうか、まだ髪の毛濡れてるじゃないですか!」 「そうでした。ドライヤーが何処にあるのか解らなくて、聞こうと思ってたんでした」 「勝手に探して良かったんですよ」 「でも・・・」 「ドライヤーは洗面台の引き出しの中です。じゃあ、その間にデザートの用意しておきますね」 (良かった、思ったより普通に会話が出来てる)と思いつつ、髪を乾かしながら何気なく鏡を見た。気の所為かも知れないが、いつもより表情筋が緩んでるように見える。 (変に意識するな・・・意識するな)そう自分に言い聞かせ、髪を乾かすと、再びリビングに向かった。 「先生、どれがいいですか?」 「本條さん、どれだけ食べる気だったんですか?」 デザートの入った箱の中を見ると、ケーキが六切れ入っていた。 (甘い物が好きなのは知ってたけど、これは流石に多過ぎじゃないのか) 「ここの美味しいんですよ。だから選び切れなくて」 「確かに。差し入れで貰ったお菓子、美味しかったです」 「でしょ。俺のお気に入りの店なんです!」 「え〜と・・・この中で、本條さんのお勧めはどれですか?」 「どれもお勧めです。でもそうだな・・・まずは、このショートケーキかチョコケーキはどうですか?」 「あぁ、大体はこの二つが基本ですからね。この二つで店の味が決まる気がします」 「解ります!俺も初めての店ではまず、この二つを食べます」 仕事の話と同じくらいの勢いで、お菓子というかケーキについて話す彼が、子供みたいだと思った。 (ホント可愛い・・・俺の理性持たないじゃん。ケーキじゃなくて、君を食べたくなるよ・・・う〜耐えろ俺) 「先生?」 「あ、すみません。じゃあ、ショートケーキを食べてみようかな。ショートケーキって、シンプルなだけに拘り出すと、作るの意外と難しいんですよね。なかなか奥が深いんですよ」 「あ、先生ってケーキも作れるんでしたっけ?」 「お菓子も作りますよ。料理ほど頻繁には作らないですけどね」 「先生の作ったお菓子も食べたいです!」 「はいはい。今度、時間があったら作ります」 「やった〜。先生、大好き!」 「現金ですねぇ」と言って笑いながら、皿にケーキを移した。 「じゃあ、俺はチョコケーキを食べます。あっ、半分こしませんか?」 「ふっ・・・半分こって・・・あはは・・・」 「え、そんなに変な事言いました?」 「いや・・・あはは・・・だって、本條さんみたいなイケメンが、大真面目な顔で半分こって・・・」 「え〜半分こって言いません?」 「成人男性はあまり使わない・・・あはは・・・もう無理。笑い過ぎて、表情筋と腹筋が痛い・・・」 「先生、笑い過ぎ!」そう言って、頬を膨らませて拗ねる彼も可愛い。 こんな他愛のない遣り取りも楽しいし、幸せだなと思う。こう思える時間がなかった俺には、全てが新鮮だった。何よりも、耳に入る言葉や目に映る全てが、愛おしく思える。 「はぁ〜こんなに笑ったのいつぶりだろう」 「先生の笑いのツボが解らないです」 「それは俺にも解らないです。あまり気にした事ないですから。あ、このショートケーキ美味しいですね」 「そうでしょう。この二つと新作は必ず食べます」 彼はまるで自分が作ったかのように、誇らしげに言う。それがまた小さい子供みたいで、可笑しかった。 「先生、俺また変な事言いました?顔がにやけてますよ」 「え、そんなに顔に出てますか?」 「前に言いましたよね。先生って意外と、顔や態度にに出るんですよ」 「関谷家の人達には解るみたいですけど、本当に本條さんにも解るんですね」 「愛の力ってやつですかね?なんて・・・」 (これまた可愛い事を言うじゃないか。照れた顔も、慣れない所も、初々しくて全てが可愛過ぎる) 「本條さん。口開けて下さい」 「へ?」と彼は驚きながらも、素直に口を開ける。そこへ、フォークに乗せたケーキを入れた。 「えっと、これはその・・・」 「俺にも一口下さい」と言って、俺は口を開いた。彼は顔を真っ赤にしながらも、フォークで自分のケーキを掬って、俺の口の中に入れた。 「ど、どうですか?美味しですか?」 「んっ、これも美味しいです。これはかなり、拘ってる感じがしますね・・・何が入ってるんだろう」 「食べかけですけど、残り食べますか?」 「じゃあ、あと一口下さい。俺のもどうぞ」と、フォークに乗せたケーキを、彼の口元へと近付けた。 彼はそれを口の中に入れて咀嚼すると、自分のフォークに自分のケーキを乗せて言う。 「せ、先生もどうぞ」 「はい。うん、やっぱり美味し・・・え、本條さん?どうかしました?」 ケーキを食べて彼を見ると、顔は真っ赤なままに、目をきつく閉じて、片手で顔を覆っている。 「だって先生ってば可愛いのに、めちゃくちゃエロいから直視できない・・・先生それ、わざとやってるんですか?」 「願望とわざとの半々ですね」 「願望?」 「やってみたかったんですよ。恋人同士がやってる、「はい、あ〜ん」ってやつ」 「え?やった事ないんですか?」と、凄く驚いたように彼は言った。 「恋人というか、元彼とはやった事ないです。こんな風に甘い雰囲気になったり、こんなにリラックス出来る付き合いは初めてです」 「他の人とはやった事あるみたいですけど?」 「あぁ、まぁ何と言うか・・・相手を釣る為の手段みたいな気持ちでなら、やった事あります。でも本條さんが相手だと、凄い恥ずかしいですねこれ。しかも、いい歳して何やってるんだ、って感じが凄い・・・」 彼が素直に言う事を聴くものだから、ちょっと調子に乗ったかも知れない。 「歳は関係ないと思います。他の人の話の所は、嫉妬しますけど、今こうして甘えてくれてるのが、俺限定だと思うと嬉しいので、聞かなかった事にします。あと俺も、かなり恥ずかしかったです」 「すみません」と、申し訳なくなって謝った。 「でも解ります。恋人と「はい、あ〜ん」ってやるのは、実は俺も憧れみたいな気持ちありました」 「お互いの願望が叶った感じですかね?」 「そうなりますかね?あ、ところでさっき言った、半分わざとって何ですか?」 そう言われて、ギクッとした。確かに最初の一口目は、やってみたいと思ってやった。けど、二口目は意識して欲しくて、わざとそういう風に食べた。 「え〜と・・・」 「わざとって事は、俺の反応を見て楽しんでたって事ですか?」 「違います。そんな悪趣味じゃありません。そうではなく・・・」 「先生の言う事や、お願いは何でも聴きますよ?だから我慢しないで言って?」 そういう彼の顔を見て、ずっと気になっていた・・・彼が隠してきたであろう、彼の本当の顔を見た気がした。その瞬間、全身がゾクゾクした。 「本條さんが欲しくて・・・」 「いいですよ、あげます。ベッド行きますか?」 彼の言葉に無言で頷くと、彼は俺の手を引いて寝室へと連れて行かれ、ベッドの上に座った。 「って、カッコつけて言いましたけど、先生も知っての通り、俺は初めてなんで・・・その、勉強はしたんですけど、上手く出来るかは自信ないです・・・って、先生はまた、何してるんですか」 俺は彼の話の途中から、彼の下着の中に手を入れると、彼のチンコを弄り始めていた。 「いや、フェラをしようかと思ったんですけど、ダメですか?」 「ダメじゃないですけど・・・って、ん"・・・」 彼の返事も待たずに、口に咥えて動かす。だが、自分の腹の奥も疼く。俺は我慢出来ずに、フェラをしながら自分で後ろを弄り出した。 「先生待って」と言って彼は、俺の頭を掴んでチンコから引き離し「俺もしたい」と言った。その顔にまたしても全身がゾクッとして、俺は再び無言で頷いた。
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