最後の整形

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自分は決して可愛いと言われるような外見ではなかった ブサイクでもなかったけど つまり普通ということだ 誰も、いい意味でも悪い意味でも振り向きもしない。 普通だなー、て 自分で思うだけならいい けれど私の胸を苦しめていたのは 「あなた、せめて二重だったらねえ」 母の言葉だった。 母は定期的に私の顔をじろじろみてはため息をつく 母は美人だった。読書モデルをやったこともあり、美意識が高い。 しかし父が、フツーのサラリーマンのため 父譲りの私の顔は結果普通になったのだ 遺伝は残酷で、美人よりもブサイク側のほうが残りやすい気がする。 正直、私は美の追求にそこまで興味がなかったし、一重でも可愛いよて言ってもらえるほうが嬉しかった。しかし母は私に美容整形を受けさせ 小学生のときに、私は二重になった。 その次は中学生のときだった。 「なんかぱっとしないのよね 顔が平べったいというか……鼻をもう少し高くしましょうよ ほら、あなたと私の横顔比べてご覧 鼻が違うでしょう」 二重どころではない本格的な整形に私はひやっとする。 鼻にヒアルロン酸を注入するの?それともプロテーゼをいれる本格的なもの? それがズレてしまったり、浮いてきたらどうするんだろう、ずっといれてる状態は痛くないのかな? 夜、サイトを見て不安で寝れなかった しかし翌日母に連れていかれ 終わったあと痛がっても大げさと笑われるだけだった それ以上文句が言えなかったのは、結果的に美容整形は成功し 可愛いといわれるレベルになれたからだった 目、鼻、あごなど色々いじり わかる人には整形してるじゃんとわかるが とくになにも考えない人にはかわいいね!ですむ外見になった 私はそれでも私をみるときの目つきが どこを変えようかと言わんばかりの母の目に怯え、大学生になると同時に母から逃れ 家を出た。 そこで私の不幸は終わるはずだったのだが 「ちょっと写真撮らせていただいてよろしいですか?」 「きれいな人」 「もし暇だったらお茶とかどうかな、なんて」 私は多分、整形すべきではなかったのだろう 誰にどう褒められても ああ、まあ整形したからね そりゃいいでしょうよと思ってしまい 誰の褒め言葉も承認欲求を満たさず通過していくだけで 通過した先 幻影の母がそれを受け止め ね!やってよかったでしょ!と笑っている 会わなくなっても母は私を苦しめ続けた そんな私の人生で、唯一の光 「きみえさんって、考え方がおもしろいね 話が深いというか、色々体験してきてるんだなって感じがする」 ゆったりと笑うその人に出会い 私は恋をした。 外見ではない、中身を見てくれたその言葉に。
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