第2話「何かちょっと、ご褒美があってもいいんじゃない」

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第2話「何かちょっと、ご褒美があってもいいんじゃない」

2c358531-22ea-4768-8842-3f2c1744b74c (StockSnapによるPixabayからの画像 )  その日もどんよりした雨。店長の色川さんは空を見上げて、ため息をついた。  「わるいな、大泉。せっかく来てもらったけれど、お客さんが来そうもない……今日は帰ってくれ」 「わかりました……でも店長、ちょっとこれを見て下さい!」  ばばっと、魔法で一気にに12本のパラソルをひらいた。  パラソルの下は透きとおるような青空。どこかから小粋なサックスでも聞こえてきそう。 「店長、どうでしょうか!?」 「お? ……おおおおお! いったいこれ、どうしたんだ大泉?」 「……パーティグッズの店で買ってきました……」  さすがに店長に『実は私、魔女の末裔でして……』なんて言えない……。  店長は一瞬だけ変な顔をしたが、すぐに、 「よし、これで客を呼び込もう! 大泉、すぐに写真をとってエンスタとチイッターにアップしてくれ。 タイトルは、そうだな…… 『ビール傘の下は、いつも青空!』でどうだ?」 「いいと思います!」  私はいそいで撮影をしてSNSにアップした。  ……すごい、あっというまに『イイね!』と『スキ!』で埋まった。  店長はせっせと開店準備をして、ほかのスタッフも呼び出した。  よかった。  私は店長さえ幸せなら、それでいいの。  ……それで、いいんだけど……。  そうだな、何かちょっと、ご褒美があってもいいんじゃないかなあ……。
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