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…め…て、やめ…て…
必至に叫ぼうとしたが声が出ない。
バリバリバリ…
闇の中で何かが何かを貪り食っている。
私はそれを恐怖と痛みで絶望しながら見つめていた。
そう、食べられているのは私。食べているのは赤い目をした大きな黒い虫のような化け物。
「やめて! 」
ようやく叫ぶことができた。そしてその声で私は目が覚めた。
夢…?
当たり前だ。化け物なんか存在しない。声が出なかったのも夢のせい。
声が出ないことは夢占いでは悩みや問題を話し出せないことの暗示だと言われている。私にはそんな悩みがあったのだろうか…いや。ない。確かに好きな人に振り向いてもらえないとか、お金が足りないとか、部活で良い結果が出ないとか、そういうくだらない問題ならあるけれど思春期にはありがちな悩みだ。その程度で声が出ない夢を見るとは思えない。いや、見るのだろうか? くだらない悩みが重要な悩みに思えてしまうのが思春期というものだ。学校だや恋愛が若い人間の自殺理由。逆に年寄りの自殺理由は健康問題。自殺の理由も世代間で違いがある。
そこまで考えて私は気づいた。どうして私は自分のことをこんなに客観的に考えているのだろう? 私は17歳。その思春期そのものだからくだらない悩みを真剣に悩むのは当然だ。それなのに全くその実感がなかった。
嫌な予感がする。無意識に自分の手を見た。
「…!? 」
そこにあったのは中世の甲冑のような手だった。好意的に考えればだが。甲冑とは違って色は黒くて赤く毒々しい斑点があって鎧とは思えないフィツット感があった。
私は跳ね起きて鏡へ向かった。確信があった。そうでなければいいと思いながら多分そうなんだろうなという確信が。
ああ…
鏡には人間の大きさの虫が映っていた。あの夢で見た赤い目の黒い塊が寝間着を着てこちらを見つめていた。
「やっぱり」
喋ると口が上下ではなく縦に開いた。だって虫だから。
甲冑のような手で顔をなぞる。金属質な皮膚だが思ったより柔らかく弾力性があり感触も感じることができた。
あの夢の通り私は食べられて虫の身体を奪った…いや食べられていた私が虫の身体を乗っ取れるわけがない。虫が私の思考を真似していると考えた方が自然だろう。でもどうして? 何のために?
「ゆりちゃん! ご飯よぉ! 」
下の階で母さんの声がした。
…オナカスイタ…
頭の中で誰かがそう言った。
「あああ…」
私は自分のお腹に手を当てへたり込んだ。確かにお腹がすいている。けどこの空腹感はいつもの食事で収まるものなのだろうか? もっと別の物を食べないと収まらないのではないだろうか? そんな予感があった。例えば人間とか…
「どうしたの? 早く起きないと学校遅れるわよ? 」
いつの間にかお母さんの声が近くなっていた。ドアのすぐ向こうから聞こえる。
ガチャリとドアの開く音。
不味い。このお腹の飢えは…いや、それ以前にこんな姿を母親に見られるのは。
「駄目! 」
しかし一足遅くドアは勢いよく開かれた。
・・・
「今日は母さん遅くなるからね。夕食はカレーがあるから温めて食べてね」
「じゃあピザとるか? 」
父さんがそう言うとピザのチラシからクーポンを切り抜き始める。
「カレーがあるってう言ってるでしょ! 」
「カレー食いたいやつだけ食えばいいじゃん」
父さんと母さんはそのままカレーを食べるかピザをとるかでもめている。私はそれをどこか遠くで聞きながら朝食をとっていた。甲冑のような手でスプーンを握りオートミールを口に運ぶ。味はしない。でも幸いお腹は膨れるみたいだった。人間を食べないち空腹が満たされないとかいうことはないみたいだった。味は人間じゃないと美味しく感じないんじゃないかと思うが気のせい気のせい。
「お姉ちゃん元気ないね」
妹の瑠璃が心配そうに…でもないか。スマホをポチる横目でそう言った。
「顔色悪いでしょ。虫みたいじゃない? 」
私は思い切ってかまをかけてみる。
「はぁ? 」
瑠璃は怪訝な顔でそう返しただけだった。虫の私がセーラー服を着て食事をとっていることには特に気にしてはいないみたいだ。いや気が付いていないのだ。どうやらみんなには私がいつも通りに見えているらしい。私が虫に見えるのは私だけのようだ。
私の頭がおかしくなってしまったのか虫の化け物が完璧に擬態しているのか…どちらかは分からないができれば前者であることを期待したかった。期待せずともその可能性の方が高いように感じる。現実的に行って大きな虫が人間を食べて成り代わるなんてありえないことだ。私がおかしくなったと考えた方が妥当だ。
どうか私の頭よ壊れていてくれ。そう思わないではいられなかった。食べ物の味を感じないのが不穏だけれどお腹は膨れているので問題ない。やはり心の病なんじゃないだろうか? 化け物に食われる夢を見るくらいだしきっと病んでたんだよ私は…
「ゆり、あんた…」
「? 」
いつの間にか家族がぎょっとしたように私を見つめていた。
え? やっぱり私、虫なの?
「スプーンが…」
見ればスプーンが根元からぽっきりと折れていた。
考え事していたせいで力の加減を間違えてスプーンを折り曲げてしまったようだ。でもまぁ仕方ない。これくらいなら昔の超能力少年ならだれでもできたことだし。別に特別なことじゃない、はず。
えーっと、こういう時はなんていうんだっけ。『懐かしの昭和』って番組でやっていたよ確か。
「ハンドパワーです」
私は引きつった顔で笑って誤魔化した。
・・・
スマホで『変身 虫 人間』で検索をかけてみたが特に何もヒットしなかった。
そこは仮面ライダーとかカフカとかがヒットして欲しいところだったのだけれどそれすらヒットしなかった。こんな有名所すらでてかこないんじゃ検索しても無意味だと私はインターネットを見限った。検索エンジン仕事しろ。
仮面ライダーにカフカ。虫人間と言えばまず思い出すのはこの2つだろう。仮面ライダーとは知っての通り虫の力を持った改造人間。カフカは『変身』というなんか目覚める虫になってたって言う外国の有名な話を書いた作者の名前だ。内容は正直何が面白いのか分からなかったけどそこを自分で想像しながら読むのが面白いらしい。何それ無敵じゃん。面白くない話を書いたのにみんなが勝手に頑張って面白く読んでくれるんだから。一応カフカは爆笑しながら書いたけど当時の読者は陰鬱な話として読んでいたらしいという逸話があるらしい。やっぱり無敵じゃん。作者は面白いと思って書いてるのに読者は暗い話だなぁと思っているなんて。何かいても面白いって思ってもらえるってことじゃん。天然こそが最強だというのか。
「うっす」
「うっす」
自分が虫に見えるなど家族にも相談することができずとりあえず学校に行くことにした。
登校中、いつもお通り武田くんと合流して軽く挨拶だけして並んで歩く。
やはり私が虫に見えるのは私だけみたいだった。家族も行き交う人々も彼氏も私にはノーリアクションだった。
ああ、そうそう。今ならんで歩いているのは私の彼氏。武田くん。芸能人で言うと元カリスマホスト城咲仁に似ている。なんでそこ? というチョイスだけど、そうなんだから仕方ない。意外にも学校ではイケメンと言うカテゴリーじゃなくて性格が男前なことで人気があった。兄貴気質だったんだね。私もそういうところに好意を抱き中学卒業を期に思い切って告白して付き合うことになった。そして現在関係はこんな感じ。
「じゃあな」
「あ、うん。じゃあね」
学校につくと同時に分かれる。私は進学科。武田くんは普通科。武田くんはスポーツは得意だけど勉強はあまり得意ではないから別々の学科だった。兵舎も別々。そしてそっけなく別れた。昨日までの私は武田くんは私が付き合ってと言ったからつきあっているだけで私のことが好きじゃないんじゃないかと、でも付き合ってくれたんだからこれから仲を深めればいいと、日々もんもんと悩んでいたものだった。実に思春期らしい悩みだった。
まぁ虫に食べられたのか精神に異常をきたしたのか、物事を客観的に考えれる今となってははっきりと分かる。脈なしですわ。私に対する興味がない。付き合ってと言われたから付き合っているだけ。私に対して性欲すら抱いていないね。どういうことなのかね。年頃の男の子ならとりあえずやってみたいということで付き合ったりするもんなんじゃないのかね。それなのに付き合っておきつつそういうこともなしとは。一体何が目的なんだ武田くんは? もしかして同性愛者なのか?
「…ん? 」
武田くんと別れてなんとなく私は校舎の2階を見た。何故見たのかと言うと上手く説明できないけれど、そう、視線を感じたからだと思う。だから吸いつけられるように2階の窓を見てそして私を見つめるもう一人の虫と目が合った。
「…!? 」
私が見返してくると思ってなかったのだろう。目が合った虫は驚いたように逃げだした。
「これはこれは…」
追いかけるべきか? でも今更追いかけても追いつけないだろう。距離が結構はなれている。それにそんなことしても意味はない。
意図せぬ同族との遭遇にも私は思っていたよりも冷静だった。まるでどこかでそれを想定したようだ。あるいは人間としての私の思考が想定していなかっただけで虫としての私は想定していたのかもしれない。同族が擬態して潜んでいるから見つけ次第接触せよと。
考えてみれば同族と会うことになるのは当然だった。私がこうして人間に擬態しているのだから同じように他の虫が擬態していても不思議ではない。そうなれば虫である私達は同族を見分けることが可能なのだから人間に擬態している他の虫も見分けることもできる。その結果はち合うことになる。今みたいに。ただ一つ疑問があるとすれば人間に擬態した虫を見た際その人間は誰か分かるのかと言うことだったがどうやらそれも分かるみたいだった。
「あれは確か…東山くん」
私は虫を見た際、気弱でオドオドした同級生なのだとすぐに分かった。
・・・
東山くんは私と武田くんの愛のキューピットだった。
「武田くん呼んできてくれる? 」
卒業式の放課後、私は東山くんに頼んで武田くんを呼び出してもらった。
「あ、はい…」
東山くんが呼んでくれれば武田くんは来てくれるだろうし告白の成功率もあがるだろうから。
中学のころ東山くんはいじめられっ子だった。いじめていたのは丸くんとその仲間たちなのだけれど、それは今は重要ではない。重要なのはその当時私と武田くんと東山くんはクラスメイトだったということだった。そして東山くんと友達の友達だった武田くんはいじめはやめるように丸くん達に抗議するなどひと悶着あり、その際私は武田くんに惚れ直したのだった。
友達の友達と言うのがなんとも微妙な関係ながら武田くんは東山くんのことを気にかけていた。いじめられていることに心を痛めていたのだ。なんて優しい武田くん。そして実際に一肌脱いだ。これは男を上げない理由はない。私が好意を抱くのも無理からぬことだった。東山くんも竹田くんに感謝し…たりはしなかった。東山くんは非常に気が小さかったので助けてくれた武田くんのもオドオドしてありがとうのひとつもなかった。まぁ東山くんは武田くんがいじめないよう働きかけてくれたことなんて知らないだろうから仕方ないのだけれど。
それからも武田くんは東山くんのことをいろいろと気にかけていた。またいじめられないかどうかってね。なんでそこまでするのかは謎だったのだけれど東山くんは小学生の頃は病弱でほとんど学校にこれていなかったらしいのでその時の名残で守ってあげないといけないと考えていたのかもしれない。結果として武田くんは東山くんをかなり気にかけていたので私は告白する際に東山くんを利用うれば告白も成功しやすいんじゃないかと考え結果としてそれは上手くいった。そして現在に至るのだった。
「久しぶりだね東山くん」
「あ、はい…」
以外にも東山くんは教室にいた。私と目が合った後、逃げ出してどこかに姿を消したわけではなく自分の席についただけだったようだ。東山くんの学科は進学科のさらに上の特別進学学科だった。難関大学を目指すコースだ。いつもの私なら教室に入るのは少し勇気がいるはずだったのだけれど虫となった私にそんなことで躊躇する感情はわかなかった。
「私のこと覚えてる? 」
「えっと…はい」
東山くんは極力私と目が合わないように言った。
「あ、クラスメイトになった人のことは全員…」
東山くんはどもりつつ視線をさまよわせつつも一応は答えてくれた。客観的に見ると私がいじめているように見えるかもしれない。
「単刀直入に聞くけど、私のこと虫に見えるんでしょ? 」
「え…あ…う…」
なんと分かり易い。めっちゃキョドってる。視線を周りに向けて今の話を聞かれてないか確認しているみたいだ。それはそうか。虫になってるなんて話誰かに聞かれるのは不味いだろう。
それにしても東山くんは変わっていないみたいだ。高校ではいじめられていないか心配になってくる。ここでは守ってくれる武田くんはもういないというのに。
「スマホ、もってない? 」
直接話をするのは不味いと考えた私はとりあえずライン交換を提案した。
・・・
『僕達はナイトメアに食べられてしまったんです。ナイトメアというのは悪夢を象徴する黒い馬の悪魔のことなのですがそれとは直接的には関係ありません。むしろ僕達は松山さんが言うように虫のように見えますしね。この虫がナイトメアと呼ばれているものなんです。そしてナイトメアが食べているのは夢ではありません。魂みたいなものです。実際には魂とは違うみたいなんですが仮に魂と呼んだ方がしっくりくるかなと。魂を食われたから僕らはナイトメア、つまり虫の姿をしています。でも虫の姿をしていると言っても実害はありません。僕達は僕達のままです。慣れればまた人間の姿に戻ることもできるみたいです。僕は出来ませんけどそうして戻った人もいます。言い忘れていましたが虫になっているのは松山さんだけではないです。皆しばらくは松山さんみたいに戸惑っていましたがすぐに人間に戻っています。虫になると体が丈夫になるみたいで擦りむいたりしませんけど人間に戻ったらまた擦りむいたりするみたいです」
めっちゃ文字送ってくるやん…
私はラインの文面に圧倒されて呟いた。現実ではオドオドしてる東山くんだったけれどラインでは饒舌だった。饒舌っていっていいのか分からないけどめっちゃ文字を打ち込んでくる。その後も今私の置かれている状況について説明が送られてくる。それはありがたいのだが
読むのが疲れる…
私はスマホから目を離して天を仰いだ。
東山くんは現在の事情をよく理解しているみたいだった。私のことを見つめていたのも説明したくてウズウズしていたのかもしれない。逃げたのはやましいことがあったわけではなく人見知りだからみたいだ。難儀な人だ。
東山くんの説明によると魂がナイトメアという悪魔のようなものに食べられただけで身体は何も変わっていないので心配する必要はないらしい。しばらくすると元に戻るらしい。東山くんはまだ戻れないけど。これで安心。心配する必要なし。よかったよかった…いやいや、それって心配する必要本当にないのか? 確かに体は人間に戻れるなら問題ないように思えるけれど変わってしまった思考とかは戻るのだろうか?
今の私はまるで自分のことが自分のことでないように感じる。昨日まで感じていた小さな不安や喜びを感じなくなっている。人間の体に戻ったら頭の中も元に戻るのだろうか?
『変わってますけど自分が自分であろうとすれば変わりないと思います。大切なのは自分の意志です。漫画とかで悪霊にとりつかれて悪いことをするという展開があると思いますが僕はあれが納得できません。心は自分が決めるものです。昔の自分はこうだったなと行動していればまたもとに戻ります』
それって変わる前の自分を演じろってこと? それはもう昔の自分とは変わってしまっているのでは?
どうやら東山くんは意外に強い人間らしい。いじめられてたのに。むしろいじめられてたから強くなったのだろうか?
私はちょっと意外に思った。
「私、食べても味が分からないんだけどもしかして魂を食べれば味がしたりする? 」
気が付くと、私はスマホにそう打ち込んでいた。
東山くんは当面は何も心配ないという。とりあえずそれは信用しよう。そうなると今の問題として一番の問題はこれだろう。何を食べても美味しくない。お腹は膨れるから問題ないと言えば問題ないけどやっぱり味がしないのはストレスだ。
『僕はもともと味覚異常だったので何とも言えませんが栄養バランスがよければ問題ないんじゃないでしょうか? 魂を食べるのはよくないと思います。それに魂を食べた人は何処か引っ越したことになるのでもしかしたら国家権力みたいな物に連れていかれているのかもしれません。処分されている可能性もあります。危険です』
国家権力って…なんだか話が大きくなってきた。
「何処かに連れていかれる? 」
『想像なのでなんとも言えませんが、松山さんと違って攻撃的に変わってしまった人もいてその人は引っ越したことになってしまいました。ナイトメアと人間の間にも秩序があるみたいです。松山さんにもそのうち彼らが接触してくると思います。その時やましいことをしていると何か良くないことをされるかもしれないのでやはり魂を食べるのはよくないかと思います。その人達は僕よりも事情を知っているかと思うのでもし接触してきたら状況を聞いてみたらいいかと思います』
国家権力かどうかは兎も角、虫…ナイトメアを管理する機関みたいなものがあるのは確かみたいだ。魂を食べるって言うなら危険な存在だし野放しにはできないのは当然かもしれない。
「ねぇ。もしかしてナイトメアの中に私の知ってる人もいる? 」
私がそう打ち込んだ時だった。
「東山に聞く必要はないぜ」
「!? 」
スマホの質問に答えたのは東山くんではなく実際の声だった。聞き覚えのある声がすぐ後ろから聞こえた。
「武田くん? 」
私の後ろには困ったように立つ武田君の姿があった。
・・・
「東山は目印なんだ。あいつは何も知らないからあいつとどう接触するかで俺達はそいつがナイトメアにどれくらい影響されているかを判断している」
どうやら武田くんは虫になって人間に戻れた人のようだった。
「もしかして私を食べたのは武田くんなの? 」
もし武田くんも虫だったなら私を食べた可能性が一番高いのは武田くんじゃないだろうか。私がまず一番初めに思ったのは恋人が隠し事していたことへのショックでもなく武田くんも虫だったというショックでもなくそんなことだった。
「いや」
しかし武田くんは首を振った。
「俺はナイトメアになる前の人間みたいにしていたかったからお前と付き合うことにしたんだ。食いたかったわけじゃない」
どうやら虫から人間に戻れても思考は元には戻らないらしい。武田君はずっと前に虫になって人間に戻ったけれど思考は戻らなかった。だから私と付き合ってみたらしい。
それを聞いた時、私は私の初恋が終わったのだと理解した。竹田くんが私を食べたかったのならまだ救いがあっただろう。私に執着しているのだから。でもただ人間の真似をしたかったという理由で私と付き合っていたのならそれは私でなくてもいい。私に興味がなかったってことだ。
幸い私はもう虫だからなんとも思わなかったけれど。
「ナイトメアになる前の俺はお前のことを好きだったみたいだから」
だけどそれを聞いた時、何故か私の目から涙がこぼれた。これっぽっちも悲しくなかったというのに。
私は虫でも人間でもないらしい。
今の私が虫の私の命令で動いているのだとしたら今の涙は人間の私が泣いたのだろう。
ナイトメアがどういう存在なのかは分からないが私はきっと人間と敵対することもないだろうと思った。
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