03.ひと目見ればすぐにわかる

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

03.ひと目見ればすぐにわかる

 ラムネを飲み終わった竜星は瓶の飲み口を握って、力を込めてそれをまわす。雑巾をしぼるときのような手つきで。  すると、ガラス瓶の口を覆っていたプラスチックのカバーが外れ、瓶の中に詰め込まれていたビー玉が外に転がり出る。 「こりゃ『B玉』だな」  竜星は転がり出たビー玉を夏祭りの輝きに透かしてのぞき込むなりそう言った。  僕もさっそく竜星を真似して、ガラス瓶からビー玉を取り出す。 「これは『A玉』なのかな?」  透明で濡れたビー玉を手に取った僕に、竜星は首を振る。 「それも『B玉』だ、残念」 「わかるの?」  竜星は得意げにうなずいた。 「『A玉』は一級品だからな。透明感も色合いも丸みもみんな『B玉』とはぜんぜん違う。だから、ひと目見ればすぐにわかる。『これだ!』って」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!