04.スーパーの店先で気まぐれに

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04.スーパーの店先で気まぐれに

 それからの僕は竜星とともに地元の同じ中学に上がり、そして僕たちは別々の高校に進んだ。僕は大きな街の進学校に。竜星はマンモス私大の系列校に。  僕はさらに遠い大都会にある大学を選んだ。竜星はそのままエスカレーター式に私大へ。大学入学に伴って、二人とも故郷の小さな町を離れた。大学生の僕は、そのままその大都会で就職。竜星も就職でさらに遠い地方都市に勤務となったようだった。  そんなふうに子どもの頃の親友だった僕たちは、別々の道を歩んだ。  だから、僕は竜星とももうずいぶん会っていない。互いにそれぞれの場所に立ち、それぞれの仕事に追われていたから。  それでもときたまラムネ瓶を手にするとき、竜星の話を意識してしまう自分がいた。  いつの日か『A玉』を見つけられるかもしれないと。  僕はラムネを飲むたび、ガラス瓶の中に『A玉』を探した。  大学の学祭で、恋人と出かけた花火大会の出店で。会社の新サービス発表会で振舞われるノベルティで作られたラムネや、スーパーの店先で気まぐれに売られているラムネに。  竜星は言った。それはひと目見ればすぐにわかると。僕はその言葉を信じていた。いつか「これだ!」と気づく日が来ればいいと。
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