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07.酔客の爆発的な笑い声
それから三年ほど過ぎた頃、竜星から連絡があった。僕の働く大都会へ仕事で来ることになった。もし、時間が合えば飲みにでも行かないか。こんな機会なんてめったにないからさ。
もし、どころじゃない。僕は竜星のために時間を作った。
「十年ぶりくらいだな。こうして会うのは」
ビールのジョッキを片手にすっかり大人になった竜星が笑った。
どこにでもあるような居酒屋。酔客の爆発的な笑い声、食器やグラスが乱雑に触れる甲高い音。絶えず流れてくる揚げ物や焼き物の匂い。せわしなく通路を行き交うビールジョッキや食器を抱えた店員たち。
そんな居酒屋の半個室的なスペースのテーブルで向かい合った僕たちは、ビールジョッキで乾杯する。
「勇輝は結婚までしたんだな。おめでとう」
「竜星は付き合ってる人はいないのか?」
「忙しすぎてそれどころじゃない。ま、仕事が面白いから、今は仕事が恋人みたいなもんだ」
ひさびさに会った竜星は、見かけこそ大人に変わっていたが、子どもの頃と変わらない笑みを浮かべる。
「な、家族写真みたいなものはないのかよ」
竜星に見せたスマホには、子どもの一歳の誕生日を祝う紗季と僕。
「幸せそうでなによりだな」
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