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勢い余って落としてしまったタオルが部屋と扉の間に置き去りにされているが、それを拾いに戻る暇は与えてくれそうにない。
「かっ戒?」
ついには抱き上げてきた戒に、優羽は狼狽えながら浮いた体をバタつかせたが、戒はよしよしと優羽の足を撫でただけで止まろうとはしなかった。
「優羽、嵐がおさまるまで一緒にいてくれませんか?」
思いもよらない戒の告白に、肩にかつぎ上げられたまま優羽はクスリと笑う。
「戒。まさか、雷が苦手なの?」
意外な弱点を知ったかもしれないと嬉しさを含んだ優羽の声は、直後に落ちた雷の音で悲鳴にかわる。
これには、戒がクスリと笑みをむけた。
「優羽、聞こえますか?」
立ち止まった戒が階段の踊り場にある大きな窓の外を見上げる。
それにならって顔を向けると、風と雨が唸り声をあげて窓を打ち付けていた。
「え、戒は何か聞こえるの?」
窓を開ければ、それこそ暴風雨の音が聞こえるかもしれないが、ここは家の中。シンと静まり返った室内に物音は聞こえない。
「戒?」
再び無言で歩き始めた戒に運ばれながら、優羽は首をかしげた。
どこに行こうとしているのかはわからないが、優羽の部屋がある三階へと戒は階段をのぼっていく。
「でも、ヒドイ天気だよね。朝見た天気予報では晴れるって言ってたのに」
突然の異常事態に、慌てて警報を知らせていた朝のニュース番組を思い出す。たしかに今夜は満月が綺麗に見える冬の晴れ空のはずなのにと、お天気のお姉さんが泣きそうな声で言っていた。
「ねぇ、戒はどこに向かってるの?」
優羽は抱き運ぶ戒の顔を見ようとその顔を覗きこむ。
「戒?」
かすかな横顔しかみえなかったが、黙ったままの戒がいつもと違うようにみえてどんどん不安が募ってくる。
なんだか怖い。
「ねぇ、かっキャッ?!」
突然優羽の体は宙に浮いて、弧を描くようにある部屋に投げ込まれた。
ポンポンと軽くリバウンドする地面の正体に、目をつぶって痛みが訪れるのを覚悟していた優羽は、辺りをうかがうようにそっとその目を開ける。
「ッ?!」
驚いて辺りを見渡した優羽は、部屋全体が巨大なベッドのような構造に息をのんで体を起こした。
入ったことは一度もない。
てっきり自分の部屋に運ばれるだろうと思っていたのに、まさか自室の隣がこんな部屋になっているとは想像もつかなかった。
心地よい空間のはずなのに、なぜかドキドキと心音が乱れ始める。
「優羽」
名前を呼ぶ戒の声にいい予感はしない。
「なっなに?」
声が震える。
上に重なるように手をついてきた戒のせいで、広いベッドの海は、そこだけ二人分の重力で沈んでいた。
「ッ?!」
襲いくるように唇をよせてきた戒に、一瞬、心臓が止まったかと思った。
だけど、その痺れるような熱い口づけに、どくどくと脈が全身を駆け抜けていく。
「戒ッ…~ァ…んっ」
押し倒されていく意識の中で、ふとあけた視界に戒の瞳がうつる。
「ッ?!」
銀色とも薄い碧ともつかない不思議な色をした戒の目がジッと優羽を見下ろしていた。有り得ない現象に息をのんでいるうちに、その光はスーっと音もなく消えていく。
「えっ、戒?」
見間違いだっただろうかと、優羽は消えた光の正体を確かめるように戒の目を見つめた。
「何かありましたか?」
「えっなン!?」
再びふってきた激しい口づけに呼吸が荒く変わっていく。
濡れた服のすそをめくる戒の手が、優羽の下着を強引に引きずり下ろしてきた。
いつもの優しい戒ではない。
噛みつくように襲ってくるキスも、押し潰すように迫ってくる吐息も、強引に服を裂いていく爪も、何もかもが戒なのに戒じゃなかった。
抵抗するつもりなんかないのに、驚いた脳が勝手に戒の行為を否定しようと腕を伸ばす。
「大人しくしてください」
「ッアッ?!」
深く足を折り畳もうとしてくる戒の力強さに圧倒される。頭の中が混乱して、何がなんだかわからなかった。
「戒ッ待ってそんなイキナッぁ──」
「優羽」
「────ッ!!?」
そんな顔をされても困る。
愛撫もなく割り込んでくる戒を押し退けようとしていたのに、吐息をこぼしながら潤んだ瞳で見下ろしてくる妖艶さに眩暈がする。
すべてを許してしまいそうなほど、戒の熱にあてられて、奥から蜜が溢れ出そうとしていた。
「ッう」
入口をめり込んでくる圧力に、思わず優羽は眉をしかめた。
段々埋まってくる戒の肩をわしづかみ、爪を食い込ませながら深く息を吐き出す。
はぁはぁと、震える足に合わせて、か細く呼吸も乱れていた。
「優羽、可愛いですよ」
引き裂くように割り込んでくる戒は、吐息を震わせてもだえる優羽を不思議な色をした目で見下ろす。
潤んだ瞳に混乱と恐怖を浮かべながらも、これから訪れる快楽への期待なのか、知らずに笑っている少女の姿に心が震えていた。
「優しくしてあげたいのですが───」
異物の侵入に抵抗をみせる優羽の秘部を犯して、戒は奥までいっきに貫く。
快痛に泣いてのけぞる優羽の首筋に舌をはわせながら、ゾクゾクと込み上げてくる快楽の始まりに、優越と愛しさが止まらなかった。
「────お願いされても出来ません」
「ヒッ…ぅッ…アッ」
無理矢理突き上げてくる戒の力に、優羽の身体中が悲鳴をあげる。
生理的な涙がこぼれ落ちるが、律動に擦りあげられる秘部には確かに愛蜜が滴っていた。
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