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どれだけの沈黙があっただろう。
叔母は静かに「わかった」とだけ発した。
涼は去り際に付け加えた。
「母さん、疾風と美月は僕らが思う以上に惹かれ合っているよ。お互いに魂から渇望していると言ってもいいと思う。魂の片割れとはこういうことなのだと2人の姿から教えられたくらいだ。それなのに特に美月は疾風への想いを押し殺し、封印しようとしていた。いじらしいよ。一門へは疾風と美月の事は話していないから安心して。二人を応援してあげて欲しい。そして、助けてやって欲しい。吉祥本家次期当主として、先を見通す目を持つ吉祥分家への誠意として僕の告白を受け入れてくれると信じています」
涼は叔母に深々と頭を下げると応接間の扉を静かに閉めた。
「確かにあなたの事を侮っていたわ」
涼が部屋を出て暫くすると叔母は伏せていた顔を上げた。
「颯一兄さんの子だと改めて感じたわ。先を見通し、人知れず水面下で着々と地固めをしていく。誰も傷つけず、悪意が吉祥を覆わない様に。完敗ね。私は授からなかった力だもの。だから、本家に嫁いだのだったわ」
叔母は薄っすらと笑った。
その顔は吉祥家一門を束ねる当主の顔だった。
「行きなさい、疾風。美月の所に。もう、何も言わないわ。だけどこれだけは肝に銘じておいて。あなたは吉祥本家の脇を固める四分家筆頭の血を引く者だと言うことを。この先もその力を吉祥一門の為に使うと。美月と共にね」
この日、叔母は僕の告白を全面的に受け入れた。
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