三度目の正直

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小さな池の畔に建つ四階建ての家に僕らは子供の頃に住んでいた。 20年前の豪雨で土砂に埋まり、その後に周辺の整備も兼ねて建て直された。 今は美月が住んでいる。 一階はガレージ、二階は事務所で使っている。三階がLDKと客間が二間、寝室は四階にある。 自然の驚異から身を守る最低限の備えの造りだ。 仕事の話なら二階の事務所でと言う美月の提案を押しのけて僕は食後に美月をリビングソファへ誘った。 テーブルの上に借地権利書を置くと美月は怪訝そうに「これは?」と窺う様な目を向けた。 「この里山の借地権利書だ。当主から預かった。僕らが存命中は特例で僕らの思う様に運営していいって」 理解できないと言った表情の美月に僕はくすっと笑った。 ソファに座る美月の前に膝まづく。 そっと隠し持っていた小さなグレーの箱を開いた。 ブルーグレーのアオライトの指輪、僕らの誕生石だ。 「美月、5歳の時の告白覚えている?あの時と同じ告白をするために今日まで準備をしてきた」 美月は無言で僕を凝視している。 「美月、あの頃と変わらず美月が愛しくて仕方がない。魂の片割れだと思っている。たまたま兄妹で生まれたけれどそれは今世の器としてだ。充希叔母様にも了承を得てきた。僕らを阻むものは何もないよ。美月、僕と生涯一緒にいて欲しい」 僕は三度目の告白をした。 美月は口元を抑えフルフルと震えて「うそっ」と言葉にならない声をもらした。 僕は美月の左手の薬指に指輪をはめ、手の甲にキスをする。 「美月、愛している」 僕は美月を抱きしめた。 それから僕らは永い間、押し殺し積み重なった感情を抑えきれない様に求め合い、やっと片割れの魂が重なった気がしていた。
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