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冷たい何かが唇に触れて、薄っすらと意識が戻る。
呟くような小さな声が聞こえた。
「夢じゃなかった」
透き通るような声。
物心ついた頃から僕が愛してやまない美月の声だ。
徐々に浮上する意識が静まり返った寝室の静けさを一層感じさせる。
ゆっくりと瞼を開けると青白い月明かりを背に涙を流しながら眠る美月がいた。
僕は居たたまれない気持ちになる。
「美月、もう、どこにもいかない。これからはずっと一緒にいるよ」
少し前まで重なっていた美月の身体をぐっと引き寄せ、抱きしめた。
大きな窓から青白い月の光が差し込む3月下旬の事だった。
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