三度目の正直

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【一度目の告白】 まだ少し肌寒い風が川面を吹き抜けると薄桃色の花びらが一斉に舞う。 小川の両脇に植えられたソメイヨシノが楽しそうに踊っている様に見えた。 「美月、そんなに走ったら転ぶぞ」 風に舞う桜の花びらを追って、川岸を走って行く美月を気づかい父さんが声をかけた。 「おとうさま、だいじょうぶよ。なんて、きれいなんでしょう。疾風っ!疾風も一緒におどりましょう」 薄桃色のワンピースの裾をつまみクルクルとまわって見せる。 桜の花びらになったつもりなのだろう。 「きゃっ!!」 小石につまずき、転げそうになった美月を僕は慌てて抱きとめた。 「ほらっ!お父様の仰るとおりになった。さっ、きちんと立って」 僕は美月を立たせると目の前で膝まづいた。 僕より少し小さくて、とても柔らかい美月の左手を取り見上げる。 「美月、ぼくのお嫁さんになってください。ずっと、ずっと、美月と一緒にいたい。お父様とお母様のようにずっと一緒にいたい」 僕はそっと美月の左手の甲にキスをした。 美月を見上げると満面の笑みを浮かべている。 「はい、よろこんで。わたしは、疾風のお嫁さんになります」 美月は僕の告白の返事に頬へキスをくれた。 僕は立ち上がり美月と手を繋いで両親に歩み寄る。 「お父様、お母様、僕たちは結婚します。そして、お父様とお母様の様に仲睦まじく、ずっと一緒にいます」 両親を見ると何とも複雑そうな顔をしていた。 それはそうだろう。 僕らは正真正銘、双子の兄妹なのだから。 父は僕らに近づき膝を折ると諭す様に小さく呟いた。 「どんなに愛おしくとも、どんなに離れたくなくとも兄妹で結婚はできないのだよ」 その表情は悲し気で、父を見つめる母は今にも泣き出しそうな顔をしていた。 僕、吉祥(きっしょう)疾風(はやて)は僕の愛しい妹、吉祥(きっしょう)美月(みつき)に二人の5歳の誕生日に一度目の告白をした。
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