三度目の正直

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吉祥(きっしょう)家は、さる大名に仕えた家老の家柄で本家は明治の頃に東京に移り住んだ。 代々武家ではあったが、当主の考え方が革新的で時代の流れに上手く乗った。 解体された武家社会で生活にあえぐ元家臣たちを助ける為に蔵の中にある物で貿易事業をはじめ財をなす。 そもそも家老職であったから組織を統括することに慣れていた。 元家臣を雇い入れ、組織はみるみる成長していく。 貿易事業で成した財を国内産業の発展に再投資していった。 僕の父、颯一(そういち)は吉祥家の分家に生まれた。 母とは家同士の繋がりで結ばれた。生まれながらに決められた許嫁だった。 曾祖父の代、終戦時の農地改革で不在地主として土地を没収される所を吉祥家本家が全て買い取り、母の家を存続させた所からの約束だったらしい。 かつては風光明媚な里山だった母の実家周辺は、時代と共に限界集落の体をなしていった。 巡ってきた吉祥家との婚姻で再び窮地を脱する機会を得たのだ。 そして、25年前に立ち上がったのが『里山プロジェクト』 今で言う地方創生の先駆けで一次産業から六次産業までをひとつの街の中で回転させていく取組みだ。 僕が5歳の誕生日に美月に告白をした場所は、父が本家から任された『里山プロジェクト』の管理地だった。
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