鱗男

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 あー、やらかした。  カタタン、カタタンと心地よい振動に揺られながら俺はそう思った。  本当に違和感なかったんだよな……。  俺は某有名サイトで小説を投稿しているクリエイターだ。  昨夜は魚類と人類が共存している異世界長編ファンタジーを徹夜で描き終えたばかりだ。  だから違和感がなかったんだ。  睡眠不足で正常な判断ができなかった、っていうのもある。  俺は隣に座るスーツ姿の男にチラリと視線を送る。  通勤ラッシュもひと通り落ち着いた午前9時。  車内には立っている人もいるけれど、俺と同じ始業時間の遅い会社なのか、または大学生なのか、スマホを覗いたり瞼を閉じたり、それぞれ皆落ち着いた朝の時間を過ごしているようだ。  隣の男も、手にしたスマホに気怠げな視線を向けている。  ごくありふれた朝の風景だった。  ただ一つを除いては……。  俺は素早くフリック入力を続ける男の指に目をやった。  本当によくできている……。
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