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今度の修学旅行の行き先がオーストラリアになった。初めての国外にクラス中が沸き立った。勿論、俺もその輪の中にいた。後日、各々でパスポートを取ってくるように先生からのお達しがあったので、市役所に取りに行ったとき、事件は起こった。
「俺が……養子?」
生まれたときから同じ屋根の下で過ごしてきた両親と僕の続柄には”養子”と記されていた。最も幼いころの記憶でも既に両親の姿はあるので、とても信じられるものではなかった。しかし、公的な書類に書かれている以上、事実だ。
養子である事実もショックだが、それ以上に両親に隠されていたことが辛かった。あれだけ傍にいて、心からのやり取りを交わしていたと思っていたのに、二人には隠していた大きなものがあった、ということがどこか悲しかった。もしかすると、どうしようもない事情があったのかもしれない。いずれにせよ両親に聞いてみるよりほかには無かった。
「父さん」
「ん?」
喉をうまく通らない夕食を終え、リビングで寛いでいる父に意を決して話しかける。
「俺って、養子なの?」
口にした途端、父の顔が強張った。
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