本当はイエスと言いたかった

4/21
前へ
/21ページ
次へ
F市に出来た話題の複合図書館。 そのサイレントスペースはおしゃべり禁止。 超控えめな音量で流れるクラシック音楽の他は、ページをめくる音、書きものの音、電子機器の操作音ぐらいしか聞こえない。 テーブルの向かい側には小鳩君が黙々と勉強してる。 今は午前11時ぐらい。 一時間前、ここのエントランスで私を見た小鳩君のあからさまなガッカリ顔。 まさか私が私服化けするとでも期待していたんだろうか。 期待に副えず申し訳ない。 『やっぱり来なきゃよかった』とモヤる。 けど、落ち着いた空間の中、いつの間にか数学の問題を解くのに没頭してた。 と、突然肩を揺らされ、顔を上げると、赤面し怒った様な表情の小鳩君にメモを見せられる。 『周りの迷惑になるから、出よう』 え? 何? 私、何かやらかした? 小鳩君の目には非難の色が滲んでいる。 私が迷惑行為を犯したと言っている。 何を!? 訳が分からず固まる私を置いてサッサと出口に向かう小鳩君。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加