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4日後という言葉は眠ることも計算に入れていたのだろうか。目覚めたセリカは全てが無事に済んだことを確認すると心からホッとしたように微笑った。そして、人払いをすると物言いたげなウォルフェンを見て小さく息をつく。ベッドの上ですっぽり体を覆う青いガウンを羽織ると身を起こした。
「色々気付いたみたいだね」
ウォルフェンは少し言い淀み、小さく頷く。セリカはあえて軽く質問した。
「見た?」
紋様のことだとすぐに気付いた。
「はい。それに、もう2度と、と仰いました」
「私はあの日滅びたティアーズの姫だよ」
「⁉」
「あの日も同じ皆既月食。王国の転覆を狙う奴らが地球人の闇が流れ込むタイミングを狙ってティアーズの心を壊した。民はひとたまりもなく侵されて殺し合ったよ。昔は魔法の方が強くてね。科学はあまり発展していなかった。王家は有事に対応できる力を持っている者達で役割を分担して国を守っていて、私は封印の力をただ一人持っていた」
「まさか……」
「私はティアーズを封印した。星の影響が断ち切れれば民は元に戻る。何よりあんなに壊れそうなティアーズをそれ以上見たくなかった。星の加護が消えれば生きることは難しくとも、未来に繋がる可能性に賭けて……そうだよ、かつてのティアーズにとどめを刺したのは私なんだ」
言葉が見つからなかった。セリカは祈るように指を組んで虚空を見上げた。
「よっぽど心残りがあったのか、罰なのか、私の魂は地球で再生されて色んな人生を歩んだ。ティアーズを隠している月を見上げながらね。2度と帰れぬ故郷……そう思っていたのに、まさかティアーズが私を見つけるとは思わなかった」
「怒って、なかったんですね」
「……うん」
「ティアーズ様は自分を殺したのではなく、助けたとわかっていたんですね」
「ウォルフェンも、そう、思うの?」
「はい」
ウォルフェンの返事は揺るぎなかった。神官にとってティアーズがすべてだ。
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