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「あれ?」
「何?」
「どうして封印されたことは歴史に残っていないんでしょう。それに地球が悪いというよりは、それを利用したティアーズの者が原因だと思うんですけど」
「……たぶん、兄だと思う」
「?」
「星を封印するんなんて荒業、たくさんの民が犠牲になっただろうことは変わらない。そこにどんな事情があろうとも大多数が納得できることじゃない。兄は私を溺愛していたから、責められたくなかったんだと思うよ。地球人の闇が濃くなければこの事態は起きなかった。だから元凶は地球。そういう風にしたんじゃないかな」
ウォルフェンは「ああ」と声をあげた。今はセリカも気付いている罪悪感は、
「それしかなかったのかもしれないけれど、奥方様はひとりで命を落としたんですね。悲しむ人がたくさんいたのに。きっと、ティアーズ様も」
「ええ。……姫である私を守ってたくさんの臣下が命を落とした。それがとても悲しかったのに、自分も同じことをしてしまった。それにずっと気付けずにいたの」
静かに涙が頬を伝った。ウォルフェンはそっとハンカチを差し出した。
「僕らにとって奥方様は今も、昔もティアーズ様を守ってくれた人です」
「…………ありがとう」
ハンカチを受けとったセリカが涙を拭う。その動作でガウンの袖がずれて露わになった左手にきらりと指輪が光ってウォルフェンは目を剝いた。その様子に気が付いたセリカがきまり悪げに微笑む。
「まぁ、簡単に破棄できるもんじゃないよね。指輪の消滅は一時的で、実はだいぶ前から戻っていたんだ」
「な、ならば、何故!?」
「距離は置こうって話していたのよ。指輪があれば妻の義務とか何やかんや外野もうるさいだろうからって隠ぺいの魔法をかけてくれて、でも、そのまま行方不明になっちゃったから。今回の力で解けたみたい。まぁ、指輪があってもなくても結局ティアーズの妻だったね」
ウォルフェンはパクパクと口を開け、そしてフルフルと震えて据わった目でセリカを見た。迫力にセリカが顔を引き攣らせた。
「言いたいことや思うことはたくさんありますが……正直にお答えくだされば口裏合わせもしますし、怒りません」
「は、はい」
「ティアーズ様を愛していますか?」
じわじわとセリカの頬が赤くなる。どうしても言わないとダメかと言いたげな視線を向けるもウォルフェンの迫力に押し切られた。
「誰よりも、誰よりも……愛しているわ。離れても逢えなくても、ずっと想っている」
きっとティアーズの前では言わないであろう気持ちを聞けたことでウォルフェンは溜飲を下げた。
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