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説明の最後のほうは、ほぼ憎まれ口だった。
「そんな僕を支えるのが、親友の君の役割じゃないか」
そう言ったウィッグス通りの変人、フロランタンに、クローブはかみつく。
「うるさい! 私はそんな役割を引き受けた覚えはないぞ」
ルーシーはクローブのほうへ顔を向ける。
「ということは、クローブさん、あなたは彼とお友だちなんですね。その服装からすると、あなたは宮廷にお勤めですね」
「ええ、そのとおり。自己紹介するのが遅れました。私はクローブ。宮廷に勤めていて、フロランタンとは腐れ縁だ」
そんなところで、フロランタンが口を開いた。
「まあ、そういうことで、これで僕のことがわかったんだから、問題ないだろう?」
「いいえ、問題あります。わたしは、スティッチャーさんのところで雇ってもらっています。お世話になっているところを急に辞めることなんてできません。それに、わたしに魔術師の助手なんて務まるはずないでしょう」
ルーシーは猛然と反対する。フロランタンはすごい魔術師とはいえ、やはり変人だ。何事にもやる気がないし、クローブによると、性格までねじくれているらしい。そんな人のもとで助手をするなんて、まっぴらだ。
「でも、僕はもう、君を助手にすると決めたんだ。ええと、君の名前は……」
「ルーシーです」
このやりとりを見て、クローブは、名前も知らないのに雇おうとしていたのか……、とあきれていた。
なんて勝手な人なんだろう! フロランタンは、すでに自分の中で、ルーシーを助手にすると決めている。
「ううん、君の最初の仕事は何にしよう……」
「だから、わたしは助手にはならないと言っているじゃありませんか!」
そんな二人の様子をじっと見守っていたクローブが、急にハッと何かを思い出したように手を打った。そして、ルーシーを連れて部屋の隅まで行き、彼女に真剣な目で訴えた。
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