鬼ヶ島からの手紙

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 小町が家に帰ってきたのは、戦争が終わってから一年後、細々と復興が始まりだした頃だった。  あの日から時の止まった座敷には、何もかも残ったままだ。けれどたった一つ、再会を待ち望んだ、愛する人の姿が足りなかった。  鬼ヶ島の兵士で生き残った者はいなかった。一人残らず、惨殺されてしまった。  それは、法隆寺雅宗に至ってもそうだった。  卓袱台の上には、彼の枕元に置いたはずの粉薬が置かれていた。その隣には、彼が遺した手紙が置かれていた。  手紙には、人間の戦争に巻き込んでしまったことへの詫びが綴られていた。そして、お腹の子を頼む、私の分まで生き抜いて欲しい、そう書かれていた。  ただ、手紙は一つではなかった。 『これを読む頃、君はいくつになっているだろう。  愛と優しさを信じて生きる、君と小町の幸せを、心から願っています。  まだ見ぬ私の子よ、さようなら。』
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