セクシー忍者お蘭

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セクシー忍者お蘭

 突き刺すような真夏の日差しが降り注いでいた。  ここは東京都田無市(タムシ)の駅前から約三分の魔界野小学校だ。  窓からは、東京とは思えないほどのどかな田園地帯が並んで覗いて見えた。春には満開の桜並木が彩っていた。もちろん今は桜の季節ではない。  だ。毎年桜の咲く頃になると花粉症に悩まされる。  ボクの担当する六年Z組では三時間目の授業がとり行われていた。  夏休み前、最後の授業だ。  明日は終業式なのでクラスのみんなも気が抜けている。  だが、にわかに教室内は騒然としていた。  教室の窓際にビーチパラソルを開き、折りたたみ式のサマーベッドの上に長い美脚を投げ出し美少女が横たわっていた。  カラフルな水着が目にも鮮やかだ。まるでセレブ女優みたいに遠慮なく(くつろ)いでいた。ヒサシの大きな白い女優帽をかぶっている。長い脚を投げ出して手にはワイングラスを持っていた。  当然だが中身はアルコールではない。ただのアップルジュースだ。さすがに小学生が授業中にアルコールを飲むワケにはいかない。  彼女の正体は、セクシー忍者のお蘭だ。  本名かどうかは定かではないが、伊賀の蘭丸子という名前のようだ。ふざけた名前だ。  それにしても明らかに異質だ。しかしあまりの光景に誰も口出しができない。  ザワザワと教室内が騒がしい。 「お、おい、ちょっとお蘭……」  ボクは呆れた顔で、ゆっくりと歩み寄り彼女を注意しようとした。 「ふぅ、暑いわねえェ。どうしたの血相を変えて。(ジイ)や?」  グラスに入ったアップルジュースを手にし眩しそうに窓の外を眺めた。 「あのなァ、誰が(ジイ)やだ。なにをしているんだ。お蘭」 「フフゥン、良いとこに来たわ。(ジイ)や」  笑みを浮かべ手招きをした。 「だからボクは(ジイ)やじゃないですよ。なにをやっているんですか。お蘭?」  慌ててボクは注意した。 「こんな日差しの強い日は、日焼け止めクリームを塗ってくださる?」  お蘭はお気に入りのピンク色のランドセルから日焼け止めクリームのボトルを取り出した。さり気なくボクの前へクリームのボトル容器を差し出した。 「いやいや、なんで担任のボクがお蘭に日焼け止めクリームを塗らなくっちゃならないんですか!」  ボクの名前は空牙(クウガ)小次郎。  一応、この六年Z組の担任教師をしていた。
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