人魚姫は天然物

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 ザザ〜ン ザザ〜ン  聞こえるのは浜に打ち寄せる潮騒だけ。細い月の光は磯の岩屋まで届かない。そんな岩屋の最奥に一人の魔女が住んでいた。 「ああ、いい夜だねぇ。なんてったって静かなのがいい」  魔女が満足げに呟いたその時、突如として静寂が破られた!!   「まぁ〜じょ〜さぁ〜〜〜ん!!」 「キィーッ! あの大声はマリンだね!」 (ベチンベチン)  魔女が忌々しげに吐き捨てた途端、入り口の扉が大きな音を立てて軋みだした。 「魔女さ〜〜ん、いますかぁ〜〜?」  窓から覗けば人魚のマリンが尾びれを大きく振りかざし扉に打ち付けている。 「おやめっ! そんなことしたらドアが壊れちまうだろうが!」  魔女が飛んでいって扉を開けると、マリンは滑るように飛び込んできた。 「このバカ娘! 何してくれてるんだい? ノックってのはね、手を使うもんだよ!」  魔女が怒鳴りつけると、マリンは悪びれもせずに答えた。 「え〜? だってこの前普通にノックしたら、魔女さん居留守使ったでしょ?」  
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