曰く

「あそこ、またパトカー止まってる」
「本当だ。また誰か亡くなったのかな」
「あのアパート、俺らが子供のころから曰く付きだったよな」
「小学生の時からだよ」
「たしか、小さい女の子がベランダから転落死して、それ以来夜中にベランダを見ると、窓越しに女の子の霊がじっとこっちを見てくるって話だったよな」
「ぜんぜん違う。一人暮らしの男がトイレに閉じ込められて亡くなって、それ以来その部屋ではたびたび『出せ、ここから出せ』って声が聞こえるって話だよ」
「ほんとかよ」
「間違いようがないね」
「なんでそんな言い切れるんだよ」
「だって俺が考えたんだもん」