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「なによ、野中君」
早希が野中君を睨む。
「ふはっ。あれは笑えたな。そうそう、あれ。俺の中学の時の笑える思い出ベスト1だよ。お前、俺に告白したよな。よくお前なんかが出来たよな。あんな太ってたくせに」
野中君だけが大笑いする中、私の周りの空気だけがずんずんと重くなっていった。私は、耳鳴りがするのを感じた。中学生の時のあの苦しみがまたよみがえってきて、私を首から下へ抑えつけた。私は話をするどころか顔を上げることも出来ずに、ただうなだれていた。
「やめろよ。笑い話じゃねえよ。川村さんに失礼だろ」
沢田君がいきなり立ち上がり、野中君に詰め寄った。
「なんだよ、沢田ごときが調子乗るなよ」
沢田君と野中君が剣呑な雰囲気になった時、近くの席に座っていた井原君が止めに入った。
「おいっ、今のはお前が悪いよ、野中!」
野球部で学級委員長だった井原君には逆らえなかったのか、野中君は「ああっ、わかったよ」と、ふてくされながら違う席に去って行った
「優菜、大丈夫?」
早希が心配して私の手を握ってくれた。でも、私の頭の中は出席した後悔でいっぱいだった。誘ってくれた早希が悪くないのはわかっていたけど、やっぱり野中君には会いたくなかったし、会って悲しくなった。
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