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別に野中君に怒っているわけじゃない。クラスで目立っていたし、おもしろいからって理由で野中君を好きだった、あの頃の自分が間違っていたようで、とても悲しくなった。ひょっとしたら野中君も変わっていて、「あの時はごめん」なんて、謝ってくれるかもと少し期待していた自分にも腹が立っていた。
中学生の頃、野中君は私に構ってくれる唯一くらいの男子だった。私は体が大きいから目立っていたかもしれないけど、早希とか芽依ちゃん達と、教室の隅で大人しくしているような控えめなグループにいたから、あまり男子との交流はなかった。だけど、野中君だけは気軽に私に話しかけてくれた。
「おおっ、川村。そろそろ大台超えたんじゃないの?」
「もう、野中君。そんなわけないでしょ」
野中君は、私の体重が百キロ超えたんじゃないかって、いつもいじってきた。でも、そんな会話でも私に話しかけてくれることが嬉しくて、私には楽しみだった。だから、中学3年生の夏休み前に、少しでも想いを伝えたくて、野中君に手紙を書くことにした。小心者の私は、結局その手紙を書くのに一ヶ月以上かかった。
私は野中君と付き合いたいとか恋愛したいわけじゃなかった。ただ、自分の中に芽生えた大切な気持ちを、知ってもらいたいだけだった。
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