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だから、重くならないように、軽く流されないように、何度も何度も書き直して、ただ私の言葉や想いが少しでもいいから、胸の中に残ってくれたら、そんな想いで書いた。だから、この手紙を書き上げた時、なんだか不安になったけれど、どこか誇らしい気持ちも生まれた。
それから早希に相談して、何度も折れそうになりながら、夏休みになる一週間前の昼休み、野中君を中庭に呼び出した。
野中君は怪訝そうな顔で、中庭まできた。
「なんなの、川村? おもしろい話?」
私はすごく緊張したまま、精一杯の勇気をふりしぼって震える手で、「この手紙、読んでほしいです」と、封筒を差し出した。野中君は無愛想にそっけなく封筒を受け取ると、そのまま雑に封を破き、手紙を取り出した。
「なに、これ? ラブレターとかじゃないよな」
野中君は迷惑そうに手紙を読み始めると、すぐにそれを手でぐしゃぐしゃに丸めた。
「川村、冗談はやめてくれよ。なんでお前なんかにラブレター貰わないといけないんだよ。気持ち悪っ!」
そう言いながら、野中君は私に丸めた手紙を投げつけた。傍で隠れて見守っていてくれた早希が飛び出してきて、「ひどいっ!」と、野中君を怒ってくれたけど、野中君は無視して去っていった。
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