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私は慌てて「そんなこと、謝る必要ないよ」と、沢田君に言った。
「そんなことない。ずっと謝りたかったんだ。ああいうことで人を笑うなんて、絶対に間違いなんだ」
真剣に謝る沢田君に「もういいから、気にしないで」と、お願いしたけど、沢田君はしばらく頭を下げたまま何回も「ごめんなさい」と、謝り続けた。それからほどなくして、同窓会はお開きの時間になった。
私は、また野中君の顔を見ることになるのが怖くて早々に店を後にした。すると、沢田君が「川村さん、ちょっと待って」と、慌てて追いかけてきた。
一緒に店を出た早希が、気をきかせて少し離れてくれた。
「どうしたの、沢田君」
沢田君は、「おすすめの本、教えてほしいんだ。だから、連絡先を教えてほしい」と、少し声を震わせながら言った。
「うん、いいよ」
私は今まで男の人と関わるのを避けて、連絡先の交換なんてしたこともなかったのに、その時は驚くほど自然に答えていた。
帰り道、早希に何の話だったのって、散々聞かれたけど、恥ずかしくてずっとはぐらかした。
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