春の告白

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違和感に、伸ばしかけた手が止まった。 「気持ち、いい?」 彼女が大きく頷いた。 「お日様はあったかいし、吹く風からも冷たさが抜けて、草のいい匂いがするじゃない」 両腕を、青空を抱くように大きく広げ、彼女が振り返った。同意を求めるように小首を傾げて笑う。 (・・・かわいい) だが、そこじゃない。 俺は伸ばした腕を、伸びをするように頭上へと上げた。彼女の視線を避けて、顔も上に向ける。 「そう、だよねー。っていいよねー」 春夏秋冬、日本の。 ああ。 青空が目に染みる。 俺の"春"は、まだまだ遠い。 ひと先ず今日は、おしまい。
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