Live.4

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▶ STAGE―1ー1 > player name:Yuppie_07 < 両親が海外に行ってからというのも、俺の12月23日は朝から忙しい。なぜなら、クリスマスは蓮の誕生日も兼ねて、我が家は間をとって23日に行うから。 両親がまだ日本に居た頃は、母親が全てやっていてくれたが、今は俺がやらなくてはならない。最初の2年くらいは、ゆか兄の所でお祝いして貰ってたけど、ゆか兄だっていつも暇な訳じゃないから、この数年は俺が頑張って作ってる。 まぁ……どう頑張っても、母親やゆか兄みたいな豪華な料理は作れないけど、蓮が喜んでくれるだけで満足だった。 (どうせ明日は、2人でデートするんだろうな……。いや、俺は25日にはちさんの生配信があるから、別に羨ましいとかそんなん思ってないけど) 「ただいま〜。これテーブルの上に置いておくよ」 「おう」 「結人さん、これで良いですか?」 「お〜それでいいよ。2人ともありがとな」 昨日は万全の体制で買い出しに行ったのに、買い忘れをしてしまった。かといって、鍋の火を見てないといけない状態だったから、本日の主役である蓮に頼んで、怜と2人で買いに行ってきて貰った。 「そういえばもう、お正月用の飾りとか売ってたよ」 「あ〜そういうもの買っておかないとダメだったな……」 (正月まで後少しか……。年末年始の買い出しもしておかないとダメだな) 「明日、3人で買い出し行きませんか?」 「え、せっかくなんだから明日は2人でデートして来いよ」 買い出しに行くなら、人数は多いに越した事はない。でもクリスマスイブな訳だから、邪魔するのも気が引ける。 「兄さん、デートは25日だよ」 「あれ?25日って、パーティーだか食事だかに誘われてんじゃないんだっけ?」 「しょ、食事にさそっ、誘われたんですけど……いや、行くんですけど……」 「怜、落ち着いて?深呼吸して……リラックスだよ」 (あ〜これは……既に興奮してんな〜)と思ったけど、考えてみればそうなるのも解る。 大ファンで憧れの超人気俳優、本條青葉との食事なんだから。そりゃあ、怜じゃなくてもファンにしてみれば、興奮するのは当たり前だろう。更には、いつもお世話になっている灯里先生に、関谷先生と野崎さんも一緒だという。 (まぁ、そのメンバーだと緊張しない訳はないよな。そもそも、怜にとっては"本條青葉がその場に居る"ってだけで、パニックものだろう。俺ももし、相手がはちさんだったら……って考えただけで失神しそうだしな) 「いやマジで、そんな大物と食事なんてすげぇよな」 「だから、兄さんも誘ったのに」 「でも25日はダメなんだよ、ってあれ?じゃあなんで25日にデート?」 普通なら、予定がある日にデートはしないんじゃないかと、素朴な疑問が湧いて出た。 「あ、あの……出来れば明日は、結人さんも一緒に、3人で出掛けたいって、えっと、ボクが蓮に言ったんです」 「そういう事。だから明日は3人で、買い出し兼ねて出掛けよう?それで、お正月の飾り選ぼうよ」 「あの、良ければ、その……結人さんにも一緒にプレゼントを選んで欲しくて……」 (くっ……なんて出来た弟達なんだ。クリぼっちの俺の事、わざわざ誘ってくれるなんて。これはプレゼント追加だな) 「え、嫌だった?」 「お兄ちゃん嬉しくて泣けてくるよ」と、わざと大袈裟に言うと、蓮が「やった~久し振りに、兄さんと出掛けられる」と飛び付いて来た。 「おい、その図体で飛び付くなっ、重いっ……怜、助けて」 「便乗で~す」と言いながら、怜までくっ付いてきた。 俺は2人の気遣いや優しさが素直に凄く嬉しかったけど、でもさすがに……ちょっと恥ずかしかった。 「あ〜も〜ほら、こんな事してたら料理の続きが出来ないだろう」 「ボクも手伝います!」 「僕も手伝うよ」 「あ〜じゃあ、そこの茹でたジャガイモあるから、それでポテサラ作って」 2人は仲良く返事をしてから手を洗って、ポテサラを作り始めた。そんな2人を(いいな~)と思いながら、俺も(よっしゃやるか!)と料理に取り掛かった。 3人でワイワイしながら作ってたら、外が暗くなる頃には料理も出来た。盛り付けが終わったモノから、テーブルに並べていく。 「そういえば怜、途中から撮ってただろ」 「だって推しが料理してる所なんて滅多に見れないじゃないですか!そりゃあ撮りますよ!」 当たり前の様に怜がノンブレスで言うと、蓮も「実は僕も撮ってた」と自供し始めた。 「あのな~、今日の主役は蓮だろ。俺を撮っても仕方ないだろうが」と呆れた様に言うと、怜は「蓮はその……始まってから撮るつもりです」と、顔を赤くしながら言った。 「何気なく惚気けるのヤメテ~」と、笑いながら言った後、俺は「あ、だったらハンディで撮ろうぜ」と提案した。 「いいね、皆で撮ろうよ」 「蓮、お前ちゃんと撮れんのかよ?」と心配して言うと、怜が「でも最近は、前より上手くなりましたよ」と、フォローになってんのか解らない、微妙な事を言った。 「それと、さっきのも合わせて、編集はボクがやります!」 「お願いします。って言っても、どうせ身内しか見ないんだけどな~」 「でも、父さんと母さんには送らないとでしょ?」 「じゃあ、怜が編集してくれたヤツ送るよ」 普段からマメに、連絡の取り合いをしている訳じゃないけど、最低限メールの遣り取りはしている。特にこういった行事の時には、カメラ通話をしたり動画を送ったりしている。 「あ、ボク……縁人さんと、凪沙さんにも見せたいです」 「あの2人はよくね?」 「見せるなら、呼んだ方が早いんじゃない?どうせなら、大人数の方が楽しいでしょ?」 「忙しいから来ないだろ」と思っていたら、蓮が連絡して20分後に、ゆか兄が風呂敷包みを持ってやってきた。 「邪魔すんで~」 「邪魔するなら帰ってくださ~い」 そんな俺のツッコミに蓮と怜が笑って、蓮の誕生日とクリスマスが始まった。 「ナギは?」 「仕事。納期がギリギリだ~言うて、嫁と一緒に作業場に籠っとるわ」 「あぁ、イラストの仕事か〜。年末だから大変だな」 「急に呼び出しておいて今更だけど、縁人兄さんは大丈夫なの?」 「俺は終わっとる。せやこれ……残り物で悪いけど、良かったら皆で食おうや」 そう言ってテーブルの空いてる所に風呂敷包みを置くと、包みを解いた。その中から出てきたのはお重。二段重ねになっていて、俺は上から順に開けていった。 「おぉ〜、生ハムのマリネと……お、ローストビーフじゃん」 「残り物にしては多くない?」 「凪沙達に差入れしよ~思おて作ったんやけど、行くんが面倒になってやめた」と、すっかり興味がなくなったかのように言った。 「面倒って駅の向こうじゃん」呆れながら俺が言うと、蓮が「気を遣ったんでしょ?」と言った。 「まぁ……修羅場中に行っても、邪魔になるだけやしなぁ」 「そういうもん?」 「凪沙も俺と同じタイプやぞ」と言って笑った。 確かに締切前のゆか兄は、部屋に籠ったまま出て来ない。出て来ても、話し掛けるなオーラ全開で近寄り難くて、ぶっちゃけ少し怖かったりする。 (普段あんなにポヨポヨしてるナギもああなるのか……)と、要らん想像までしてしまった。 「あのっ、こ、これ全部、その……ゆ、縁人さんが作ったんですか?」 「そうやで。せやから、口に合わんかったら堪忍な」 「凄いです!マリネとかローストビーフって家で作れるんですね?!」そう興奮気味に言う怜とは正反対に、ゆか兄はいつも通り話し出した。 「凄いんかは解らんけどな。マリネもローストビーフも、家で意外と簡単に作れるんやで。けどあれやな……時間はちと掛かるな」 「ねぇ怜。こういうの、灯里先生が作ってそうじゃない?」 「あ〜解る!」 「なんやその先生も料理するんけ?」 「お菓子も作るんだよ。たまにお菓子作りも教えて貰ってるんだ」と、また変な所でドヤる蓮が面白かった。 「その……あ、灯里先生は、料理が趣味なんだって、言ってました」 「ほうか。美人さんで料理が出来る嫁を貰った相手は、さぞ幸せやろな〜」 「ゆか兄もそういう相手、見つければいいのに」と何気なく、普段から気になっている事を言ってみる。 「あ~、俺はそういう相手は要らんな。そないな事より、はよ食べようや」 (やっぱ思った通りの答えか……まぁ、いいけどね)と、自分から話を振ったクセに、割りとどうでもいい感想しか出てこなかった。 ゆか兄の言葉で、皆が皿に好きな料理を取って食べ始めると、俺はハンディでその様子を撮り出した。それに気付いた怜が俺を撮る。 「怜、俺を撮ってどうすんだよ。蓮を撮れよ」 「順番に撮りますから安心してください!」 「俺は撮るんやないで。声だけにし……って結人。お前めっちゃ撮っとるやんけ。主役は蓮やろ、蓮を撮れや」 「見せるのは、父さんと母さんだけだから気にしないで」と蓮が言うと、ゆか兄は「それはそれでちょっと……」と、珍しく視線を泳がせた。 「なぁ、たまには蓮とゆか兄のツーショ撮ろうぜ~。ほら2人共、もっとくっついて」 「えぇ……」そう言って、逃げようとするゆか兄を、蓮が「縁人兄さん、逃がさないよ~」と腕を組んで言った。 「よくやった蓮、グッジョブ!」 それからは交代で撮影した。美味しい料理と弾む会話に、絶えない笑い声。その場にいた皆が楽しそうだった。そんな俺も、思いっ切り堪能した。 「ほな、俺はそろそろ帰るとするかな……」 「もうそんな時間?」 「そんだけ楽しかったいう事やな。せや、年越しはうちでやるか?」 その一瞬……ホントに半拍分の瞬間、怜の身体が強ばったように見えた。 「怜も一緒やで?」 「え、でも……ボクは……」 「蓮のパートナーなら、怜もうちの子や。家族が一緒に年越しするんは、おかしい事ちゃうやろ?」 さっきの怜の一瞬の反応を、ゆか兄は見逃さなかったみたいで、ごく普通に当たり前の事のようにそう言った。 (俺はたまたま見えただけで、蓮でさえ気付いてなかったのに、ゆか兄には解るんだな……) 「だよな〜。そもそも、うちで年越しする予定だったんだから、別にゆか兄の家で年越ししても大差ないよな」 「ほ、本当に……良いんですか?」 「ふはっ、今更かいな。普段から蓮と来とるのに、変な所で気にしぃやな〜」 「そういうのって、捉え方は人それぞれでしょ。怜にとっては違うんじゃない?いくら縁人兄さんでも、強制はダメだよ?」 (待って……俺の弟、めっちゃイケメン過ぎん?何そのさり気ないフォロー。兄ちゃん、お前が弟じゃなかったら絶対惚れてた) 「そうや、これは強制やないから怜が決める事や。けど、ほんま遠慮はしんといてや?そういう気遣いは、死ぬほど要らんからな?」 「あ、えっと、その……蓮が行くなら、一緒に行きます」 「じゃあ、皆で一緒に年越ししよう。あ、でも初詣は2人で行こうね」 「うん」 「あ〜すいませ〜ん、そういうのは2人の時にやって欲しいな〜と、お兄ちゃんは思いま〜す」 俺が茶化して言うと、ゆか兄も「大きい兄ちゃんもそう思うで〜」とニヤニヤしながら言った。それを聴いて蓮は、顔を赤くして「別にそういうつもりじゃあ……」と言う。怜も顔を真っ赤にして、下を向いてしまった。 「初々しくてええなぁ。ほんなら俺は帰るよって、後片付けは宜しくな」と言って帰ってしまった。 「そんじゃあ、片付けますか〜」と、俺は袖を捲って片付けを始めると、蓮と怜が「手伝うよ」「手伝います」と言って、3人でまた騒ぎながら片付けをした。 後片付けが終わって、3人でキッチンの椅子に座ってお茶をしながら、少し寛いでいた。 「あ~騒いだな〜」 「ゲームしてないのに、こんなに騒いだの初めてかも……」 「そういえば2人共、珍しくゲームしてないね」 「そんな時間なかったからな」 蓮に言われるまで気付かなかった。思い返してみると、朝から何だかんだやってたから、スマホすら殆ど弄ってない事にも気付いた。 (ログボは回収してあるから別にいいんだけどな)と考えていたら、気が抜けたのか頭がボーっとしてきた。 「ゆか兄じゃないけど、それだけ楽しかったって事だな。実際、楽しかったんだけど。てか唐突に、眠くなってきた……」 「怜も眠くなってきたんじゃない?」 「うん、ちょっと眠いかも……」 「じゃあ、今日はここまでにして、明日に備えて寝ようか」 「そうするか~」と大きく伸びをしながら、俺はスマホに手を伸ばした。 「兄さん、今日はありがとう。ゆっくり休んでね」 「おう。それより、ちゃんと怜を部屋まで連れて行けよ」 「解ってるよ」 「おやすみ~」そう言い残して部屋に戻ると、俺は着替えてベッドに潜り込み、そのままぐっすり寝た。 その日がキッカケだったかのように、次の日から俺は多忙を極めた。3人で出掛けたり、推しの生配信を観たりはまぁ、いいとしよう。だってそれは言ってみれば、俺へのクリスマスプレゼントみたいな……ご褒美みたいなモノ。 でも、生配信コラボへの当日ヘルプは勘弁して欲しいと思った。当日の朝になって連絡がきて、配信内容と役割について、軽く打ち合わせて本番。しかも年末に掛けて、生配信以外の依頼が何本かあって、自分の動画の配信時間との調整が一番大変だった。 更に困ったの事に、そういう事が重なった所為か、課題がなかなか進まない。一応レポートは終わらせたけど、肝心のデザイン画が出来ていない。 (もう大晦日だってのに、何も浮かばないし。でも、夕方にはゆか兄ん家に行く事になってるし……あ~これ詰んだかも) コラボ配信は、ぶっちゃけオイシイ。相手が相手なら余計オイシイ。何故なら、虎の意を借りてなんちゃらってヤツで、少しでも知名度が上がるから。 (けど、この状況はちょっとシンドい……しかもなんで俺なんだ?)という疑問も出てきて、ふと忘れていたスカウトの案件を思い出した。 (やべぇ……なんにも考えてなかったわ。なんなら俺、返事すらしてなくね?てか、まだ少し時間があるっていっても、まだどうしたらいいか決めてない。え、マジどうしよう……) そんな事を考えていたら、部屋をノックする音が聴こえてきた。俺が「どうぞ~」と言うと、怜が「あの、今って大丈夫ですか?」と訊いてきた。 「うん。大丈夫だけど、なんかあった?」 「この前の、蓮の誕生日の時の動画編集が、やっと出来たので……えっと、遅くなってすいません」 「あぁ、あれはプラベ用だから、いつでもよかったのに。怜だって火曜まではバイトだったし、その間にも勉強もしなきゃダメだったろ?だから謝らなくていいよ」 俺や蓮は学校が休みだから時間の融通は利くけど、怜はバイトがある上に、勉強する時間も必要になるから、時間に限りがある。 運良く俺の動画編集は全部終わってたのが、俺にとっても怜にとっても救いだったけど。 「そうなんですけど、いくらなんでも時間掛かり過ぎたかなって……その……いつもと違うので、なんか試行錯誤しながらだったんです」 「あ~確かに、プラベはプラベで勝手が違うよな。でも、そんな試行錯誤するようなもんか?身内だけで観るモノだから適当で良かったんだぞ?」 「えっと、それは解ってるんですけど……ホント、その、こういう編集は初めてだから……」 怜には家族と呼べる家族は婆ちゃんだけだ。その婆ちゃんも今は、腰を痛めて入院している。そして、ここぞとばかりに、ずっと疎遠だった娘夫婦が婆ちゃんに取り入ってる。多分だけど、婆ちゃんの財産狙い。因みにその娘というのは、怜の亡くなった母親のお姉さんだ。 怜は小学生の頃に、爺ちゃん婆ちゃんに引き取られた。でも、怜が中学を卒業した後に爺ちゃんは亡くなったと聴いている。爺ちゃんが亡くなる前に、怜に財産を遺していた事も聴いていた。 そしてそれを知ったオバサンが激怒していたらしい。だからなのかも知れないけど、婆ちゃんの財産だけでも、自分達のモノにしたくて必死なんだろう。 怜が一人暮らしを始めて、今では事務所名義の寮……といっても、セキュリティが行き届いたマンションだけど……に移り住んでも、怜は自分や財産の心配より、婆ちゃんの身体の心配だけをしていた。きっと、婆ちゃんも怜の事を心配してると思う。 (足を地に付けて自分で歩き出した怜にとっては、財産なんかより、婆ちゃんの存在だけが何よりも、かけがえのないものなんだよな……) そんな怜だから、ゆか兄の言った言葉は凄く嬉しかったんじゃないかって思う。だからこそ、編集に時間が掛かったんだろう。 「良かったら、観て貰っていいですか?」 「それなら蓮も入れて、3人で観ようぜ。って、もしかしてアイツまだ勉強してんの?」 「はい。お昼ご飯食べてからずっと勉強してます。ボクは今日のノルマ終わらせたので、編集の仕上げしてましたけど」 (医大に現役で入学するのは大変なんだろうけど、勉強ばかりしてても仕方ないだろう) 蓮が勉強好きなのは今に始まった事じゃない。そりゃあ、運動もしてるみたいだし、食事も睡眠もちゃんと摂ってる。そこはシッカリしてて凄いと思うけど、なんかちょっと呆れてくる。 (それに……俺と怜で先に観たって言ったら、アイツの事だから絶対に拗ねるだろ) 「はぁ〜、仕方ない。どうせ夕方にはゆか兄ん家に行くんだし……勉強は終わりにさせて、休憩兼ねて3人で動画観よう」 「そうですね。関谷先生も、無理に詰め込んでも意味ないって言ってました」 「それは言えてる。でも無理してる訳じゃないと思うよ。それに、蓮は昔からあんなだから今更っていうか……。けど、さすがに止めさせた方がいいかもな」 (単に俺が勉強嫌いなだけで、そう思っちゃうのかも知れないな〜。そう考えると、周りから見たら俺も、デザイン描いてる時やゲームしてる時って、そう見えるのかも知れないよな……気を付けよ) 俺は怜と一緒に蓮の部屋に行って、半強制的に勉強を止めさせてリビングへと連れて行き、お茶とお菓子を用意すると動画を観始めた。 約一時間弱くらいの長さの動画はキレイに纏まっていて、あの日、皆が感じた"楽しい"が詰まっている気がした。観ているうちに、あの日の事を思い出して3人で笑った。 楽しい……それだけじゃなくて、何だか温かい気持ちにさせられた。それはきっと、編集してくれた怜の気持ちが込められてるからだと、勝手に解釈した。 観終わった頃には丁度いい時間になっていて、それぞれ支度をして、戸締りをしてゆか兄ん家へと向かった。
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