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Ⅶ
「でも、罪の告白って聞いたときは、どんなことを言い出すかとドキドキしたわ」
私が、再びしゃべり始める。
「まりあちゃんの告白、可愛かったよね」
シスター・リディアは、ひたすらまりあが可愛いようだ。
「いまごろ、どんな話をしているのでしょうね。皆さんまりあさんのために祈りましょう」
神父が、にこやかに言って、合掌した。私たちもそれに倣って合掌する。
「主は皆さんと共に」
「また、司祭と共に」
「こよい、まりあさんに神の祝福がありますように。主イエス・キリストによってアーメン」
「アーメン」
そろそろ聖堂のあかりを暗くしようと思ったときだった。入り口付近で人の気配がする。控室を出て聖堂に入ると、若い男女が、祭壇に向かっていた。
女性は、まりあだった。じゃあ、男性は、浩二君?
まりあが、私たちを見つけて駆け寄ってくる。
「先生! シスター、神父様。夜分に失礼します。お花を飾らせてください」
バラの花束を、祭壇の花瓶に入れた。
「まりあちゃん、どうだったの? お話は何だったの?」
私はそれが一番気になる。
「はい。あの。紹介します。この人が田中浩二さんです」
まりあちゃんは、男性を私たちの前に引っ張ってきた。
「こんばんは、あの、初めまして田中浩二と言います。まりあさんが、どうしてもここへと言うもんですから。夜分来てしまいました」
「いえいえ。ちょうどね、まりあちゃんのことが気になって、お祈りしていたところなの。で、まりあちゃんどうなったの」
「それがね、……ええとね。へへへへ」
「まりあちゃん、何かいいこと、あったんじゃない」
シスターが、まりあちゃんの袖を引っ張った。
「うん。実はね、今日、プロポーズされました」
そう言って、左手の指を立てて見せた。薬指には銀色の指輪が、光っている。
「ほら、やっぱり。プロポーズだったじゃない! おめでとうよかったね、まりあちゃん」
「ありがとう先生。ここで告白していってよかった。先生やシスターや神父様が、お祈りしてくれていたのを感じたよ」
「そう、彼氏から1週間、何もアプローチがなかったのは、何だったの?」
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