ピース

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「君の元に飛んでくから〜♪」 ハンドルを握る手は軽かった。 時計は 10時20分 よし。 予定の11時には十分間に合う。 もっと加速したい欲を抑え、踏み込みかけたアクセルを弱める。 「映画、楽しみだな。」 半分うそ。 "美佳さんと見る"映画 楽しみでないわけがない。 美佳さんと二人きりで逢うのは、これが2回目だった。 初めての出逢いは大学生の時。 友人同士の集まりで、学部の違う美佳さんを紹介されて知り合った。 とはいうものの、それからの交流はほとんどなく キャンパスで見かければ挨拶するものの、それも片手で数えるほど。 結局、学生時代に逢っていたことすら、ついこの間まで忘れかけていた。 それがほんの1ヶ月前。 友人と遊びに行った先で、3年ぶりに偶然再会したのがきっかけとなり 連絡先の交換から、今日の2回目のデートに至るというわけだ。 …まあ、デートと思っているのは、自分だけかもしれないが。 美佳さんは、こちらのことをちゃんと覚えてくれていた。 「ここでこんな話したよ!」とか、「こういう自己紹介してくれた!」など こちらが思い出せなくても優しく、それでいて笑顔で話をしてくれた。 可愛い。 うん。 可愛い。 伸びた鼻の下を戻しながら、現実に視点を戻す。 …よし。 寝不足な目を擦って鼻歌に戻る。 「君と一緒に生きた奇跡〜♪」 この曲 いつか一緒に聴きたいな。
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