6人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の元に飛んでくから〜♪」
ハンドルを握る手は軽かった。
時計は
10時20分
よし。
予定の11時には十分間に合う。
もっと加速したい欲を抑え、踏み込みかけたアクセルを弱める。
「映画、楽しみだな。」
半分うそ。
"美佳さんと見る"映画
楽しみでないわけがない。
美佳さんと二人きりで逢うのは、これが2回目だった。
初めての出逢いは大学生の時。
友人同士の集まりで、学部の違う美佳さんを紹介されて知り合った。
とはいうものの、それからの交流はほとんどなく
キャンパスで見かければ挨拶するものの、それも片手で数えるほど。
結局、学生時代に逢っていたことすら、ついこの間まで忘れかけていた。
それがほんの1ヶ月前。
友人と遊びに行った先で、3年ぶりに偶然再会したのがきっかけとなり
連絡先の交換から、今日の2回目のデートに至るというわけだ。
…まあ、デートと思っているのは、自分だけかもしれないが。
美佳さんは、こちらのことをちゃんと覚えてくれていた。
「ここでこんな話したよ!」とか、「こういう自己紹介してくれた!」など
こちらが思い出せなくても優しく、それでいて笑顔で話をしてくれた。
可愛い。
うん。
可愛い。
伸びた鼻の下を戻しながら、現実に視点を戻す。
…よし。
寝不足な目を擦って鼻歌に戻る。
「君と一緒に生きた奇跡〜♪」
この曲
いつか一緒に聴きたいな。
最初のコメントを投稿しよう!