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「時間的には梶信幸にも十分犯行が可能ですね」
「そうだな」
次の聞き込みに向かっている最中の車の中で若林が言うと、時臣はどこか上の空といった様子で答えた。
「なにか分かった事でもあるんですか?」
「いや、まだ何か分かったっていう段階じゃない」
「でもなにか気づいたことがあるんなら教えてくださいよ。私、嫌なんですよね。推理小説なんかで、探偵役の人物がもったいぶって気づいたことをなにも話さない感じ。分かった事があるならさっさと言えよ」
「なんだ、タメ口か?」
「ああ、ごめんなさい。口が滑りました」
若林が焦る気持ちも分かるが、時臣は口を開くわけにはいかなかった。それはまだ想像の妄想の域にある状態だったし、根拠のない事実を言ってもそれが間違っていた場合に相手を無駄に傷つけることになる。
不服を発散するように、若林はアクセルを踏む足を強めた。
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