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死ぬ前に会えない? 君は突然光ったスマートフォンの画面を見て、ぎょっとする。だが送り主の名前が犀川涼であることを確認して、安堵した。
犀川涼の口癖は「死にたい」だった。課題が増えれば、こんなのできない。死にたい。誰かと意見が合わなければ、合わせるとかだるい。死にたい。バイトでうまくいかなければ、失敗した。死にたい。
君にとっての「ゲームしたい」が彼女にとっての「死にたい」だった。
聞いているこちらまでもを暗くする言葉を連発する犀川涼をそれでも君が見放さずにいるのは、彼女が口癖を漏らすときの口調はふざけた調子だからだ。
彼女の周りも承知していて、彼女に同意して見せたり、たまにはふざけた調子で慰めてみたりするのが鉄板だった。
君はスマートフォンの画面が真っ暗になるまで、通知を眺めていた。だが講義室の中央で話し合っていたグループの一人が、君を呼んだ。本当は何かを確認するつもりでズボンのポケットから取り出したスマートフォンを戻し、輪の中に混ざる。
君は今、文化祭の催しを考える中心の人物の一人となっていた。年に一度、三日間にわたって開催される大学の文化祭。三年生となった君は実質、部活動のメンバーとして出しものをできる最後の文化祭だった。四年生になってしまうと、毎年十月に開催されるお祭りごとに対して何かしようと考えられるほどの余裕がなくなる。実際、君の部活動の先輩方も、就職活動に本腰をいれていて顔を出すことはあっても活動に率先して参加することはない。
君には他にも、活動場所があった。
君の口癖は「ゲームしたい」だと言ったが、まさに君はゲームの外部サークルにも所属している。SNSを通して仲よくなった歳の近い人々と、ゲーム実況をしたり、オンラインゲームで共闘したり、挙句の果てには好きの度を越えてゲーム開発をするようになった。
イベントが年明けの一月にある。君はそこで開発したゲームを、販売する。
イベントに申し込んだはよいが、間に合うのか否か。スケジュールが黄色信号を出している真っ最中だった。
さらに君には、問題もあった。
一年生のとき、必修の講義で単位を落とした。
その講義は、二年に一度しか開講されない。今年落としてしまえば、君の留年は確定する。
文化祭が終わった三日後に、中間テストがある。一年次に単位を落としている君には、最低でも八十点以上取ってもらわないと、単位は出せない。教授は残酷な宣告をした。しかも講義内容をメモしたノートを、持ち込んではいけない。
君にとってまったく興味のわかない内容のため、記憶もはかどらない。けれど覚えなければいけない。板挟みの中で毎晩復習を行うも、寝落ちする。もしくは別のことに興味が向く。それでもどうにかノートを広げることは続けている毎日であった。
大学生らしい生活を送っている君にとって、今は無理だから十二月とかでもいいかな。犀川涼へ代替案を送るのは当然のことであった。
返事はなかった。
ずっと、返事はなかった。
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