前菜:ミニトマトのカプレーゼ

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前菜:ミニトマトのカプレーゼ

「はい、おはようございますー。」 看護師の声と共に私のまぶたは強制的に開かれた。 「調子はどうですかー?」 私は全身の火傷がひどく今は頷くのが精一杯だった。 「見えますかー?彼女さんから手料理を預かってますよー。ほらミニトマトのカプレーゼですよ」 「せっかくなので細かく潰して喉に通しますね。声が出ないと思うので何かあったら吐き出してくださいね」 細かく潰されたカプレーゼが私の喉を通る。その味は天下一品だった。 「あ、あと彼女さんのお願いでこの部屋になったんですよ、何故だか分かります?」  私はゆっくりと首を横に振った。  看護師が活気良くカーテンを開けるとそこには満開の桜が綺麗なピンク色を輝かせていた。 「手料理に桜の景色を添えたかったらしいですよ!素敵な彼女さんですね!」  窓から溢れんばかりに輝く桜を見た瞬間、気づくと私はレストランに足を運んでいた。 「いつものフルコースを頼む」  「かしこまりました」  私の人生は桜で始まり桜で終わる。  それはフルコースも同じ。
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