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「ねえ、言ってごらんよ」
どうして俺はこんなことをしているのだろう。
誰にだって言えないことの一つや二つあるものだろう。けれどそれが十や二十となるとどうだろうか。もしかしたら人によっては覚えていられない、言えないこととして思い浮かべようとしても思い出せないなんてこともあるだろう。それなのに、俺は一つも忘れられない。小さなものから大きなものまで、全部全部記憶の中に残っている。
それにも関わらず、俺はなんでこんな仕事をしているのだろう。秘密を吐かせて、それを使って色々する仕事。こんなこと、やりたくない。
「ねえ、言った方がまだましになるんじゃないかな」
この人は何もしていないのだろう。ただ便利そうだから目をつけられた、俺の上司に。いつだってあの人はそうだ、だって俺のときもそうだったから。
秘密の一つや二つ、忘れられた方がきっといい。十や二十や三十なんて全部忘れた方がいいに決まっている。その中には本当は些細で本来なら簡単に忘れられるようなものだってあるはずなのに、どうして俺は覚えているのだろう。
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