罪深き人々

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 前任の司祭が不在になってからしばらく経つ村へ派遣されたマースは、当初、村人たちの真率に感嘆していた。  神事の前に告解をする者が多い中、ここの住人は入れ代わり立ち代わり、毎日のように誰かしらが懺悔に訪れた。それらはとても些細なミスや小さな後悔であった。だとしても、かれらが改心しようとしているには違いない。辺境は信仰が薄いと聞いていたが、教皇領への便りもままならぬほど、忙しく過ごしていた。  こんなことならもっと早くに赴任してくるべきだったと、思ったこともまた、生生流転の相だ。  今は、別の意味でもっと早くに来るべきだった、あるいは来るべきではなかったと、日記に綴るのも口惜しいほど。前任の司祭がいつ、いったいどこへ消えてしまったのか誰にも分からない。何らかの手掛かりがあればと思って後任に手挙げしたものの、まさか、こんなことになるとは考えも及ばなかった。    
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