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人々の罪悪をはかりにかけることこそ罪に当たるが、あえて言うと些細な告解が続いていた。
が、マースはある時、衝撃の懺悔を聞いた。綱職人の告解だった。
「――それでは、あなたの罪を告白して下さい」
「神父さま。俺ぁ……商売道具を殺しの道具にしちまった」
「商売道具、といいますと」
「綱です、綱。縄よりも、こう、太いもんだから、なかなかあの世へ旅立ってくれなかったらしいですぜ。……で、実は昨日もまた、人の首をくくるための綱を、売っちまったんだ……」
「な、なぜ人の首をくくるためだと分かるのです? 馬を繋ぐかもしれないじゃないですか」
「いいや。あの人ははっきり言ったのさ。再びヤツが来た。だからこの綱で殺すと」
「”あの人”とは、どなたですか? こ、この村の人間なのですか? ”ヤツ”とは誰なんですか?」
「あの人は――い、言えねえよ……。なぁ、これで俺はゆるされたよな」
「……こ、今後、二度とこのような過ちを犯さぬよう……」
マースは決められた台詞を吐くことしかできなかった。怖ろしい罪だ。この村に来てから聞いたことのない大罪――。それを侵しているのは綱職人よりも”あの人”と呼ばれている者だ。その者が村の者かどうかは不明だが、まだ近隣をうろついているには違いない。
(命を狙われている人がいる……”再びヤツが来た”とはどういった事だろう……)
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