罪深き人々

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 数日経ったある日、戦慄の懺悔を聞いた。鷹匠の告解だ。 「神父さま。俺は仕事の相棒に酷いことをさせちまった」 「相棒、といいますと」 「鷹だよ。数日餌をやらねえで、人間を突かせちまった。とはいっても、さすがに俺の鷹だけじゃあ食いきれなかった。分厚い服も邪魔だったしな。……で、実は今度もまた、腹をすかせた鷹を連れて来いって仕事を引き受けちまったんだよ」 「そ、それは、害獣駆除の依頼かもしれませんよ?」 「はは。害獣といったら害獣かのかもな。……あの人にとっちゃ、ヤツも……」 「”あの人”とは、どなたですか? こ、この村の人間なのですか? ”ヤツ”とは誰なんですか?」 「あの人はな、この村を自由にしてくれる――い、いや、聞かなかったことにしてくれ……。なぁ、これで俺はゆるされたよな」 「……こ、今後、二度とこのような過ちを犯さぬよう……」  恐ろしい罪には続きがあった。何とむごいことが起こったのだろう。マースは亡くなった方を想い、胸を痛めた。分厚い服を着ていたとなると、おそらく身分の高い人間だ。この村でそんな服を着ている者は限られている――。マースはふと、胸に手を当てた。決して高価なものではないが、しっかりとした生地の服を幾重にも重ね着している、自分の祭服を見やる。 (……被害者の分厚い衣服……”再び来たヤツ”……)
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