僕が私で、私が僕で

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 仕方がないことだった。急な大雨で、雨宿りをするしかなかった。優しい彼は、「風邪をひいてはいけないから」と、私をホテルに誘った。下心がない、とは100%言えないけれど、下心より、私を気遣う優しさが勝っていると信じたかった。 「君が望まないなら、何もしないから」  彼はそう言って、バスルームを背にするような形で、ベッドに腰をかけた。私の裸体は見えない。でも、このまま嘘をつき続けても、別れしか見えてこない。 「ううん。一緒に温まろう?」  勇気を出して、バスルームに誘った。彼はきっと言うだろう。「騙された!」って。
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