僕が私で、私が僕で

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 彼女が先に、服を脱いだ。 「見られたくなかったんだけど」  綺麗な目からは涙が溢れた。そんな彼女を、とても愛しく思った。 「君は、僕が持っていないものを、持っている」  そう言いながら、今度は僕が服を脱いだ。 「嘘……」 「嘘じゃないし」  お互いの裸体を見ながら、笑った。ふたり、手を繋ぐと、温かいバスタブに浸かった。 「私の裸体を見たら、きっと『騙された!』って言うと思ったのに」 「いやいや。こちらこそ、だよ」  ふたり、みつめ合うと優しい口づけを交わした。 「これからも、よろしくね」  僕が笑顔を見せると、彼女は頷いた。今までずっと苦しい思いをしてきた。それはきっと彼女も同じはず。やっと出会えた天使を、二度と離さない、大事にしたいと胸に誓った。
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