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(……え)
「それだけ?」
思わず零れた問い。それぐらいなら、割とよくある事象だ。大妖怪の仕業でも何でもないんだし、獣除けの符でも渡せばそれでいい。危険度も何もないだろう。
「それだけだ。日が昇るのと共に帰っていくらしい」
「……本当に俺らが出る案件なんすか…?」
「話を聞いた限りでは、違うと思うんだが…お前も来ればわかる、の一点張りで、話を聞いてくださらないんだ」
なるほど、余程の頑固者と見える。典型的なお金持ちの例。苦手なタイプだ。
(けど、ねぇ…)
仕事は仕事だ。一度請け負った手前、今更「無理です」なんて言える訳がない。どれほど僕らが向かう意味がないように思えても、やるべきことはどうせ変わらないんだから。
ふぅ、と吐いた息一つ。顔を上げ、しっかりと父さんの目を見据える。
「……わかりました。詳しい事情は、その方に直接伺うことにします。お会い出来そうな日時を指定していただければいつでも参ります、とお伝えください」
「ああ、承った。返事を貰い次第、すぐに伝達しよう」
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