ラストレター

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 凪と朋美は昔からの大親友だ。  高校受験を機に離れ離れになってしまったが、今でも時々会う約束をしている。    その証拠に、今日は二人で渋谷の街を楽しそうに歩いている。  日曜日ということもあり人が大勢いた。ハチ公前には外国人観光客が並んでいて、至る所でカメラを持った人たちがなにやら動画を撮っていた。凪と朋美はたまたま声をかけてきたテレビのインタビューに答え、朋美が見つけてくれたカフェで食事をし、自由気ままに大都会を巡った。  凪はこんな都会でも、空は青いのだな。と当たり前のことを考えながらぼんやりと上を眺めていた。  「どうしたの?ぼーっとして」  「いや、この空。私たちの地元と変わらないなって」  「そうだね。まぁ奥地とは言え、私たちも関東圏に住んでるからね」  「空ってどこもこんな感じなのかな」  「そりゃそうでしょ」  「見たことあるの?」  「まぁ、写真とかで?あとは、修学旅行の時に見た京都の空もこんな感じだった」  「ふーん、まぁそうだよね」  凪は昔から、時々空を見る癖があった。雨の日でも雪の日でも、何かを探すかのように空を見ていた。その理由を昔聞いたような気もするが、朋美の記憶にはもう残っていなかった。    
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