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二人は、各々好きな店を覗いては、特に何も買うわけではなくただひたすらに歩いていた。自分たちの地元では見ないような商品まであって、二人のテンションは上がっていた。
二人は気づくと、便箋のコーナーを歩いていた。普段手紙を書くことのない朋美は、こんなにも種類があるのかと内心驚いていた。しかし、どのデザインもとても素敵で、綺麗だった。
「わぁ、この柄素敵」
凪は小さな声でそう呟いた。
「どれどれ?」
「ほら、見てこれ」
「わぁ、可愛い」
そこには上の部分だけが青から黒のグラデーションになっており、あちらこちらに星が散りばめてあるとても幻想的な便箋があった。
「凪こういうデザイン好きそう」
「うん、すごく好き。買おうかな」
そう言うと、凪は便箋を手に取り値段を見始めた。朋美はこんなに目をキラキラさせた凪の姿を観るのは久しぶりだった。
「便箋なんて使うの?」
「うん、毎日使ってる。手紙って好きなんだよね」
「年賀状も未だに凪だけは送ってくるもんね。実は嬉しいよ、すごく」
「なら良かった」
「でも、手紙なんて誰に書いてるの?」
「それは内緒」
「えー、なんでよ!気になるじゃん!」
「嫌だよ、教えない」
「もう。ちなみに、相手からはお返事来るの?」
「うーん、来ない、かな」
「それ、寂しくない?」
「そうでもないよ」
「そっか」
「うん。決めた。今日はこの便箋で手紙を書く」
「上手く書けるといいね」
朋美はそれ以上問い詰めなかった。人にはそれぞれ秘密があって、それを無闇に聞き出すのはなんか違うような気がしていたからだった。それに、話したくなったら凪はきっと自分から話してくれる。昔からそういう性格なのだ。
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