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朋美はそれからも立ち直ることが出来なかった。学校にはなんとかいけるようになったが、誰と話すこともなく帰る日々がしばらく続いた。
バスケもレギュラーから外され、今は幽霊部員扱いだ。ただ、朋美はバスケットボールを見ても、バスケをする気分にはなれず少しの悲しみもなかった。
今の朋美の感情は、凪を失ったことによる悲しみが百パーセントを占めており、他のことが入る隙間などどこにもなかった。
凪の死因は交通事故によるものだった。信号無視をしたトラックに当たり、思いきり頭を打ってしまったらしい。朋美はその運転手を心底恨んだが、そんなことをしたところで凪が帰ってくることはなかった。
だが、そんなある日、凪のお母さんから、「家に来て欲しい」と一本の電話が入った。
朋美は重い体を引きずりながら凪の家へ向かった。家からは凪と同じ匂いがした。リビングに飾ってある凪の写真と目が合うと、朋美の目からは涙がこぼれ落ちた。
「凪…」
朋美は同じように辛いはずの凪の母に背中をさすられた。
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