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12、エピローグ
「1359番 朴宣美 手紙だ」
看守から渡された手紙を受けとった、差出人は確認しなくてもわかる。仲間たちには今後一切連絡をしてこないよう伝えてある。仲間と思われ共犯にされてしまう恐れがあるから。
結局は一人のコリアンモンスターが起こした前代未聞の事件として報道された。マインドコントロールで報復殺人を指南し、島民、百五十人を一ヶ月以上に渡り監禁した罪は死刑判決もやむなしとの風向きだったが、直接殺人を犯していない事、監禁された島民が無事に解放された事、監禁中の環境が劣悪なものじゃなく、島民に配慮されていた事などが情状酌量の余地があると判断され懲役二十年の判決がくだった。
最新設備の女性刑務所、三畳ほどの個室には小さな窓が付いていて月の明かりが差し込んでいる。宣美は正座して封筒を開き中身を取り出した。薄いピンクの便箋に可愛らしい文字が並んでいる。
――オンニ、元気ですか? 麗娜は元気だよ。最近は指名客も増えてきて売上も絶好調。店長からも麗娜がこの店のエースだって褒められたよ!でもすごくハゲて、いや、髪の薄い男のお客さんがいるんだけど切るところなくて困っちゃうんだよね笑。しかも二週間に一回も来るんだよ。無くなっちゃうよ髪、悲。
はやくオンニの髪を切りたいなあ、あと十年? でもいい子にしてれば早くなるんだよね。オンニ、ちゃんといい子にしててね。あ、ちがうちがう、そんな事を言いたかったんじゃないんだ。実は……。麗娜……。
赤ちゃんができましたー! わーい、パチパチ!
でも妊娠中は美容師の仕事休まないとだからなあ、まあ仕方ない。と、言うわけでオンニは叔母さんになります。あれ、叔母さんてなんて言うんだっけ。まあ、いいや。
こうちゃんも、こうちゃんパパもすごく喜んでた、むしろ二人とも泣いてた。なんかこうちゃんパパって偉い人に見えないよね。笑笑 ではまたねー。
PS ねぇ。オンニ、麗娜は今幸せだよ――。
毎週、必ず送られてくる麗娜からの手紙、最初の頃は涙が止まらなかったけど、今は笑顔がこぼれる。丁寧にたたんで手紙を封筒にしまう。立ち上がってすりガラス越しに差し込む月明かり、その向こうに輝くお月様を想像しながら宣美は感じていた。
――普通の幸せを。
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