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「……もう、離れるとか言わないよ。よっぽどのことがない限りは」
「言う可能性はあるんですか」
「ふふ、まぁね。言わないとは言いきれないから」
ふわふわと告げられた言葉。夢見がちなようで意外にリアリストな彼らしいなとか、呆れ半分に考える。
「吹部の演奏は最終日だっけ、」
「はい」
「見に行くね。凛の雄姿はちゃんと動画に収めるから」
「やめてください。親ですか貴方は」
ほんとにやりそうで怖い、と呟くと彼は楽しそうな笑い声をあげた。
彼はよく笑う。ほんとに楽しそうに、幸せそうに。
先輩の楽しそうな笑い声を聞くと、じんわり胸が暖かくなるから好きだ。
「めちゃめちゃ高画質なカメラ準備しとくね」
「親か」
「親じゃなくて恋人だけどねぇ」
さりげなく告げられた言葉に少し驚く。表情、あんまり変わんない方でよかった、本当に。
(心臓がうるさい…)
きゅ、と胸のあたりを押さえる。いつもよりも速い鼓動が伝わってきた。
「あ、照れてる?もしかして」
「んなことないです、呆れて言葉も出ないだけです」
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