はじめまして

1/17
前へ
/100ページ
次へ

はじめまして

ぐるりと首を回して、フルートの入った楽器入れを担ぎ直す。 僕は黒峰凜、吹奏楽部所属の、ごく普通の高一です。 ……いや、この日本においては普通じゃないかも。 なぜかと言うと、 「りーんっ、一緒に帰ろ?」 「桐村先輩…。僕今日部活なので」 「なぁんで!せっかく恋人が一緒に帰ろって誘って…むぐぐ」 「それ、人前で言うの禁止でしたよね」 一つ上の、男の先輩が恋人だから。 桐村由宇。高二で、生徒会長。眉目秀麗、文武両道。圧倒的カリスマ力で学校を引っ張っていってくれる頼もしい先輩…なのだが、二人で歩いているとよく僕の方が先輩だと思われる。単純に、桐村先輩が低身長なだけなんだけど。 「り、凜の手が僕の口に…やばい鼻血出る」 「怖いですよ先輩」 思わず半眼になって返す。てかほんとに鼻血出てるし。 「ほら、鼻抑えて」 「ん゛ー…」 大人しく鼻を抑える桐村先輩にため息をついて。ほんとにこの人生徒会長なんだろうか。僕といると子供っぽいというか…カリスマ性というのが欠片も感じられない。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加