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出逢い
王家が住む敷地内には、バロック様式の劇場が設けられたばかりであった。
今、フランスを統治する国王は若く、人気が高い国王であった。その配慮者である王妃は、劇が好きで一昨年に建設したのだ。
そこでマリーはある貴公子と出逢ったのだ。
「ねえ、マリー? 今夜の劇はイタリアの歌姫が来るそうよ。オペラグラスで見えるといいけど」
隣の座席に座るガブリエルが目を細めて、舞台を見つめた。
「見えるわよ、ここの席はいい席だし」
オペラグラスを覗きながら、マリーは返事を返した。
「うーん、そうねえ。あ、ご覧なさいよ!! 例の歌姫よ!! 確か……マリーアって言ったかしら」
2人で和気あいあいとしていると、後ろから低い声で呼ばれた。
「失礼致します、オルレアン公爵令嬢。ロビーに使者が来ておりまして……」
「使者? 私、席を外すわね、ごめんなさいガブリエル」
「気にしないでちょうだいな」
ガブリエル謝り、ロビーへ急いだ。
「敬愛しますオルレアン公爵令嬢、申し訳ございません」
「まあ、パンティエーヴル公爵。顔をお上げなさいな、どうなさったの? ここへ来たのは、理由があるのでしょう?」
「はい。実は、王太子殿下の弟君のフランソワ様のお妃候補が決まりまして」
「まあ、そうでしたのね」
「それで、近日に王家の方々とお会いすることになりまして。ですが、オルレアン公爵令嬢は特別、早くお会いできることに」
「そうなの?」
「はい、こちらに詳しい内容を記しましたので」
「ありがとう、パンティエーヴル公爵。ご苦労様」
「いえ」
手紙を片手に私は歩き出した。有名な歌姫が来てるだけあって、ロビーは華やか。顔が知れた貴族も多くいる。
――――えっ⁉
横を通った1人の貴公子を一目見て、マリーは心を奪われてしまった。
美しい顔立ちに、眩いブロンド、おまけに募金をしたら貰えるポスターを抱えていた。あんなに絵に描いたような貴公子がいるだろうか。
マリーの頭は、その貴公子でいっぱいだった。
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