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エメラルドグリーンの宮廷服に着替え、マリー達は謁見の間へ向かうために長階段を下りていた。
「まあ、これはシャルル殿下っ!!」
突然、階段の下にいる大使が歓喜を上げた。
「一体、何事だろうか」とマリーは下を見下ろす。
「っ!!」
あの貴公子だった。さっき見た、あの……
「あら、シャルル・ブルボン=パルマ公子殿下じゃないですか。相変わらずお美しいご容姿で」
伯爵夫人が貴公子を見るなり、そう呟いた。
「ブルボン=パルマ公子なの? あの方」
「ええ。今はパリへ来ているのだと」
「……そう……なのね」
「今宵の舞踏会、令嬢達に囲まれることでしょう。そのようなお姿ならば、誰もが魅了されてしまいます」
「お上手ですね、相変わらず」
「そんなっ!!」
謙虚な姿に、また魅かれる。
そのとき、貴公子は私達の存在に気が付き口を開いた。
「――――あのとき、すれ違ったご令嬢ですか?」
その一言、私は持っていた扇を床に落としてしまった。
「またお会いできるとは。どこから見ても本当にお美しい。咲き誇るバラのようですね」
「――お褒めの言葉、ありがとう。私もまたお会いするとは、思っていませんでした」
ゆっくり、声を絞るように言葉を発する。緊張して上手く声が出ない。変だと思われていないだろうか?
「今宵の舞踏会で、またお逢いしましょう」
「ええ、もちろん」
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